BtoBの商談は、1回の打ち合わせで決まることが少なくなっています。複数回にわたって提案を重ね、顧客側でも担当者・決裁者・現場の複数名が検討に加わります。そのなかで提案資料や見積書、議事録がメールやチャットに散らばり、「顧客が今どこまで検討しているのか」が営業から見えなくなる。この困りごとを解く手段が、デジタルセールスルーム(DSR)です。
デジタルセールスルーム(DSR)とは、営業と顧客が同じ情報を1つのオンライン空間(1つのURL)で共有し、検討を一緒に進めるための場です。資料・見積・議事録・次のアクションを1ページに集約し、営業も顧客も同じ画面を見ながら商談を前に進められます。
この記事の内容
デジタルセールスルーム(DSR)とは
デジタルセールスルーム(DSR=Digital Sales Room)は、BtoB企業が見込み顧客・既存顧客と営業コンテンツを1つのオンライン空間で共有し、検討を進めるための場です。営業と顧客の「共通の作業場」と考えると分かりやすく、双方が同じ情報・同じ文脈で判断を進められます。
DSRには、提案資料や製品カタログ、見積書、議事録、次のアクション、チャットや動画メッセージ、タスクを集約します。これらを初回商談の前に用意したDSRのURLにまとめ、営業サイクル全体の情報ハブとして使います。商談中はもちろん、発注後のオンボーディングまで同じ場を使い続けられる点が、単なる資料受け渡しとの大きな違いです。
なぜBtoB購買のデジタル化がDSRを必要とするのか
DSRが求められる理由は、購買行動そのものの変化にあります。
意思決定者の70〜80%が、対面よりデジタルでのやり取りやセルフサービスを好むという調査があります※。同じ出典では、営業が初回接点を持つ時点で、顧客の購買プロセスは平均57%まで進んでいます。
※出典:These eight charts show how COVID-19 has changed B2B sales forever
営業が接触する前に、顧客は自分たちで情報を集め、検討をかなり進めているということです。営業が一方的に説明するより、顧客が自分のペースで必要な情報にアクセスし、自走できる場を用意するほうが検討は進みやすくなります。
加えて、BtoBの購買には複数名が関与し、情報が民主化しています。途中から検討に加わったメンバーにも、それまでの経緯や資料がすぐ伝わる場が必要です。DSRはこの2つの変化に同時に応えます。
DSRとSFA/CRM・ファイル共有サービスの違い
DSRは「営業に関する情報を扱う」点でSFA/CRMやファイル共有サービスと混同されがちですが、誰が使うか・何を可視化するかが異なります。
SFA(営業支援システム)/CRM(顧客関係管理)は社内向けで、営業活動を社内で記録・管理するシステムです。主なユーザーは営業組織で、顧客は使いません。これに対しDSRは社外向けで、営業と顧客が同じ画面で情報共有・コミュニケーションする場です。顧客も使う点が最大の違いです。ファイル共有サービスは資料の受け渡しが中心で、議事録・タスク・検討状況の可視化・提案ストーリーの管理までは想定されていないことが多いです。
3つのツールは連携することでより有用性が高まります。DSRはSFA/CRMと連携でき、DSR上のやり取りをワンクリックでSFA/CRMへ転記して二重入力を防げます。SFA/CRMで社内の営業管理をしつつ、顧客との接点をDSRで担う、という役割分担が現実的です。
デジタルセールスルームの主な機能
DSRツールに共通する機能を、営業の実務目線で整理します。
- 顧客専用ポータル:資料・見積・議事録・次のアクションを1ページ(1つのURL)に集約します。
- コンテンツ管理・閲覧ログ:誰がいつどの資料をどれだけ見たかを把握し、検討状況を可視化します。
- タスク管理:営業と顧客双方の役割・宿題を見える化し、リマインドで合意形成を早めます。
- チャット/リアルタイムコミュニケーション:メールに埋もれず、案件を前に進められます。
- パーソナライゼーション:顧客ごとに掲載する内容をアレンジできます。
- 電子署名・案件承認(ツールにより対応):契約やNDAなどの署名に対応します。
- SFA/CRM連携:やり取りを自動記録し、二重入力を削減します。
営業情報を1か所にまとめるという観点では、SFA/CRMとの組み合わせで効果が出やすくなります。
DSR導入のメリットとデメリット
DSRは営業側・顧客側の双方に利点がありますが、導入前に押さえておくべき注意点もあります。両面から見ていきます。
営業側のメリット
閲覧ログから、どの資料が読まれ、どこでつまずいているかが分かります。効くコンテンツが見えると、次の提案の精度が上がります。営業に関する情報を1か所に集約できるため、資料探しや情報共有の手間も減ります。さらに、顧客がルームを見ているタイミングをつかめるので、検討が動いた瞬間に連絡でき、逆に検討が止まっているときの過度な追客を避けられます。
顧客側のメリット
必要な情報が1か所に集約され、いつでもアクセスできます。過去のメールを探したり転送したりする手間がなく、社内の関係者への共有や目線合わせがしやすくなります。途中から検討に加わったメンバーも、ルームを見れば経緯を追えるため、社内での合意形成が進めやすくなります。
導入・運用のデメリットと注意点
一方で、導入すればすぐ成果が出るものではありません。初期のルーム設計やコンテンツ整理には工数がかかり、社内への定着支援も必要です。営業に使われなければ効果は出ません。顧客側のITリテラシーやアカウント登録の負担にも配慮が要ります。登録不要でURLだけで使えるツールを選ぶと障壁が下がります。
全案件で使うより、複数回・複数人が関与する検討に向きます。単発・少額の取引では手間が上回る場合があります。
DSRの費用相場
DSRは単独で提供されるほか、SFA/CRMやMA(マーケティングオートメーション)と連動して提供される場合もあります。料金体系は、利用するユーザー(ID)数に応じた課金と、機能・プラン別の課金が一般的です。小規模チーム向けと中〜大企業向けでレンジが分かれるため、価格だけで比較するより、必要な機能と利用ユーザー数の組み合わせで見積もるのが実務的です。
正確な費用は各サービスの見積もりで確認するのが確実です。まず「必要な機能」と「使う人数」を整理してから問い合わせると、比較がぶれません。
自社に合うDSRツールの選び方
自社に合うDSRを選ぶには、機能の多さより「何を解決したいか」から入るのが近道です。
まず、解決したい課題を先に決めます。受注率を上げたいのか、商談化を増やしたいのか、社内共有を速くしたいのかで、適したタイプが変わります。用途は大きく2つに分かれます。
- 商談済み顧客の受注獲得(フィールドセールス向け)
- 未商談顧客の商談獲得(インサイドセールス向け)
そのうえで、次の観点を確認します。
- SFA/CRM連携の可否:既存の営業基盤とつながるか。二重入力を減らせるかが分かれ目です。
- 顧客側の利用ハードル:アカウント登録が不要か、URLだけで使えるか。
- セキュリティ:データ暗号化・多要素認証・ISO 27001などの対策があるか。
- 無料トライアル:実際の使用感を、営業と顧客の両視点で確認できるか。
候補が絞れたら、無料トライアルで自社の営業プロセスに載るかを試すのが確実です。
DSRの導入事例
DSRが実務でどう使われているか、Mazrica DSRの導入事例で見ていきます。
株式会社エムエム総研
顧客ごとにパーソナライズしたコンテンツを1つのリンクで共有する目的でMazrica DSRを導入。顧客からは「チャットでタイムリーにやり取りできるようになった」との声が寄せられているといいます。商談が2〜3か月空く案件でも、顧客が自らルームで前回の内容を確認するためキャッチアップの工数が減り、ルームの閲覧時期から検討が動いたタイミングをつかんで連絡できるようになりました。
株式会社三越伊勢丹ビジネスサポート
同社はSFAの購買検討プロジェクトで、Mazrica DSRを利用。招待メールのURLにアクセスするだけでアカウント登録なしに使える点を評価しています。タスク・議事録・資料・やり取りが1か所に格納されるため、「Mazrica DSRだけを見れば今までの会議に追いつくことができた」と、途中参加のメンバーのキャッチアップにも役立っています。
主なデジタルセールスルームツール12選
ここからは、世界的に高いシェアを誇るDSRツールを12選ご紹介していきます。
Mazrica DSR

Mazrica DSRは、営業と買い手(顧客)の間に発生するコミュニケーションを一元管理できる「カスタマーコラボレーションプラットフォーム」です。
営業と顧客においてやり取りされる、
- 製品紹介や提案書などの資料
- 参考Webページやデモンストレーション動画などのURL
- 議事録や案件サマリーなどのテキストメモ
- 約束や宿題、確認事項など双方のタスク管理
- 連絡や質問などのチャットコミュニケーション
これらの情報を、たったの数十秒で構築できる堅牢な招待制マイクロサイト(専用Webページ)のURL一つにまとめて共有します。
買い手は、より早く、楽に、知りたい情報を取得でき購買体験が向上します。営業は、より早く、確実にお客様と信頼関係を築きながら案件を受注できます。
URL: https://mazrica.com/product/dsr/
Clientpoint

Clientpointの「プライベート・リレーションシップ・ポータル」と呼ばれるプラットフォームは、見込み客と最初に接触した瞬間から機能し始めます。
売り手はドキュメントやパンフレット、動画などのような様々なコンテンツを組み合わせることで、買い手に対してパーソナライズされた空間を提供することが可能です。
送信された資料は、企業のスタイルガイドラインに基づいてブランディングされ、電子署名が可能なため、フルサイクルの取引を促進することができます。
URL: https://www.clientpoint.net/
DealHub

DealHubの「DealRoom」は、買い手がコンテンツとどのように関わっているかを分析し、案件のコンバージョンを高めるためにどのような変更を加えるべきかを提案します。
また、顧客とのやり取りからデータを取得し、CRMに自動的にインポートすることが可能です。
さらに、全てのコンテンツをオンザフライで変更できるため、マーケティングとセールスのリーダーが見込み顧客と共有する資料をリアルタイムで変更することができます。
URL: https://dealhub.io/
Folloze

Follozeは、マーケティング主導のDSRソリューションです。
特にバーチャルまたは対面式のイベントを運営する企業や、ABM(アカウントベースドマーケティング)を確立しようとしている企業をターゲットにしています。
コンテンツを事前に選択し、いくつかのステージに分けて整理することで、見込み顧客にエンドツーエンドのコンテンツナーチャリングを体験してもらうことが可能です。
コンテンツの有効性は、相互のタイムラインダッシュボードを通じて、バイヤーズジャーニー全体で評価することができます。
Showell

Showellは売り手がカスタマイズしたDSRを作成し、リンクを通じて顧客と共有できる機能を提供しています。
顧客は、ブランド化されたウェブページに移動し、関連するプレゼンテーション、録画ビデオ、ドキュメントの閲覧が可能です。
また、Showellでは、プレゼンテーションの上に直接絵や注釈を追加したりしてさらにパーソナライズさせることができます。
Bigtincan(旧Modus)

セールスイネーブルメントサービスとしても有名なBigtincanは2023年にDSRサービスのModusを買収しました。
Modusの提供するパーソナライズされたマイクロサイトを通じたDSRでは、買い手はコンテンツを見たり、質問をしたり、他の意思決定者に意見を求めたりすることができます。
購買者の意図を確認するためのエンゲージメントを表示したり、商談成立のためのフォローアップができるなど、デバイスを問わず簡単に利用できるところがポイントです。さらにBigtincanに元々搭載されている機能で顧客のエンゲージメントの改善や購買者の体験をより良いものにします。
URL: https://www.bigtincan.com/engagement/
Enablix

Enablixの提供するDSRは、顧客が適切なコンテンツと顧客体験を得られるようにと顧客目線で設計されており、世界中の営業担当者に使用されています。
1つのアプリケーションから関連コンテンツに素早くアクセスできるため、Enablixを使用すれば、複数のシステムを使ってコンテンツを管理する必要がありません。
プライバシーとセキュリティ強化機能も備えており、営業担当者が社内資料や機密資料を外部に送信してしまうことを防止できます。
Beehivr

Beehivrは、売り手が見込み顧客をバーチャルミーティングルームに招待できるプラットフォームです。
ミーティング終了後、営業担当者はDSRを作成し、ミーティングのメモ、製品価格、資料、ウェブページなどの重要なコンテンツやインサイトを共有することができます。
URL: https://beehivr.com/
GetAccept

GetAcceptは、営業担当者がよりパーソナルな方法で営業できるよう、営業動画、提案書作成、営業資料管理、契約ライフサイクル管理、電子署名など、複数の機能を組み合わせたDSRソリューションを提供しています。
また、事前ミーティングの議題から、ビジネス提案書や見積書、ケーススタディ、プロジェクトスコープ、オンボーディングドキュメントまで、あらゆる種類のテンプレートを簡単に作成することが可能です。
URL: https://www.getaccept.com/
JourneySales

JourneySalesは、現存する最も古いDSRのプラットフォームの1つです。
JourneySalesの「スマートルーム」は、営業チームと顧客チームが一緒に仕事をし、関連するコンテンツや重要な意思決定者と関わり、同僚を招待し、素早く合意形成し、取引をより早く終わらせることができるプライベートDSRです。
こちらのプラットフォームはSalesforce Community Cloudで構築されています。
URL: https://journeydxp.com/sales/
openpage

openpageは、株式会社openpageが提供するクラウド型のデジタルセールスプラットフォームです。法人営業とカスタマーサクセスを一体化し、営業プロセス全体をデジタルで管理・可視化するためのツールです。
商談ごとに専用ページを作成し、資料共有や議事録、タスクを可視化。顧客の資料閲覧状況も把握できるため、提案のタイミングや内容を最適化できます。日本の営業文化に合わせた設計で、製造業や通信業など幅広い業種で導入が進んでいます。
ContentsWork(コンテンツワーク)

ContentsWork(コンテンツワーク)は、見込み顧客の検討段階を言葉ではなく行動で捉え、商談化を促進するコンテンツ配信・ナーチャリングツールです。
Web上で提案ページを作成し、訪問や資料閲覧の履歴から顧客の温度感を「スコア化」。反応の高い見込み客を逃さず営業につなげられます。導入のハードルが低く、セールスプランでは月額5万円~でスタート可能。日本のBtoB営業に最適化された設計で、効率的かつ効果的な商談獲得を支援します。
よくある質問(FAQ)
DSRはどんな案件で使うべきですか?
全案件で使うより、複数回・複数人が関与する案件で効果を発揮します。単発・少額の取引では、運用の手間が上回る場合があります。
買い手(顧客)はアカウント登録が必要ですか?
ツールによります。Mazrica DSRは招待メールのURLにアクセスするだけで、買い手はアカウント登録なしで利用できます。
Salesforceなど既存のSFA/CRMと連携できますか?
連携対応のツールを選べば可能です。Mazrica DSRはSalesforce連携・Mazrica連携に対応し、やり取りを活動履歴へワンクリックで記録できます。
セキュリティは大丈夫ですか?
データ暗号化・多要素認証・ISO 27001などの対策を備えたツールを選ぶのが基本です。Mazrica DSRの購買者側セキュリティ受け入れ率は99%以上です(※実績値)。
DSR導入の効果は数値で分かりますか?
Mazrica DSRの例では、受注率21.1%改善(※実績値 n=169)、付帯業務の工数10%削減(※ユーザーヒアリング)などの結果があります。
導入時に失敗しやすいポイントは?
目的の未整理・コンテンツの未整備・社内定着の支援不足です。用途を決めて小さく始めると失敗を避けやすくなります。
まとめ|自社に合うDSRの選び方
複数回・複数人が関与するBtoB商談で、顧客の検討状況が見えず商談が停滞しやすい組織ほど、DSRの導入効果は出やすくなります。単発・少額の取引が中心の営業では、無理に全案件へ広げず、対象を絞るのが現実的です。
選び方は自社の狙いで分かれます。既存のSFA/CRMを使っていて二重入力を減らしたいなら、SFA/CRM連携が強く、買い手のアカウント登録が不要なDSRを選びます。まず社内共有と検討スピードを上げたいなら、招待とURL共有が簡単なツールから小さく始めるのが失敗しにくい進め方です。
いずれの場合も、最後は無料トライアルや資料で使用感を確かめ、自社の営業プロセスに載るかを検証してから広げてください。
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