「営業のデジタル化を進めたいが、何から手をつければいいのかわからない」。営業マネージャーや経営者から、こうした声をよく聞きます。CRM(顧客関係管理システム)やSFA(営業支援システム)という言葉は知っていても、それ以外にどんなツールがあり、自社の課題にどれが効くのかまでは整理しきれていない、という状態です。
セールステックとは、Sales(営業)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、営業活動にテクノロジーを活用して最適化・効率化するツールや手法の総称です。代表例はCRM、SFA、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールなど。ただしその領域は年々広がり、いまでは営業のあらゆるプロセスをカバーするツール群が存在します。
この記事の内容
セールステックとは|営業にテクノロジーを活用する手法・ツールの総称
セールステックは、営業活動をテクノロジーで支える手法・ツールの総称です。直訳すれば「営業技術」。勘や経験、人的リソースに頼っていた営業活動を、データとテクノロジーで最適化・効率化することを目的としています。
代表的なツールは、CRM、SFA、BIツールの3つです。CRMは顧客との関係性を蓄積・管理し、SFAは商談や案件の進捗を可視化し、BIはデータを分析して意思決定を助けます。ただし、セールステックが指す範囲はこれらにとどまりません。営業資料の管理、顧客体験の向上、営業人材の育成まで、営業に関わる領域を広くカバーします。
テックセールスとの違い
「セールステック」と混同されやすい言葉に「テックセールス」があります。テックセールスは、SaaSやITプロダクトなどの技術的な製品を扱う営業職を指す言葉です。一方のセールステックは、営業活動そのものを支える技術・ツールを指します。前者は「職種」、後者は「営業を支える仕組み」であり、別の概念です。
セールステックが広がる2つの背景
セールステックが広がる背景には、大きく2つの流れがあります。ひとつはIT技術の進化によって営業のデータ活用が現実的になったこと、もうひとつは日本の生産年齢人口が減少し、限られた人員で成果を出す必要が高まっていることです。
IT技術の進化とデータ・AI活用
かつての営業は、担当者が「足で稼ぐ」属人的な世界でした。誰がどの顧客に何を提案し、どんな反応があったかは、その担当者の頭の中にしか残らないことも珍しくありません。
IT技術の進化により、こうした営業情報をデータとして記録・蓄積し、組織で共有できるようになりました。さらにAIを、蓄積された営業データから見込み客の選定や、アプローチすべき企業の抽出に使うようになっています。営業の判断を、個人の勘だけでなくデータで裏づけられる時代に入りました。
生産年齢人口の減少
日本の生産年齢人口は減少が続いています。総務省「令和4年版 情報通信白書」によれば、 生産年齢人口は1995年をピークとし、2050年には5,275万人まで減少すると見込まれています。
働き手が減るなかで売上を維持・拡大するには、一人ひとりの生産性を高めるしかありません。セールステックは、限られた労働力で高い成果を出すための仕組みとして位置づけられています。
セールステックの市場規模
セールステックの市場は拡大基調にあります。ITRの調査によれば、国内SFA市場の2024年度の売上金額は617億円で前年度比14.9%増となり、2025年度も同15.2%増の成長が見込まれています。今後はAIエージェント機能を活用したSFAの導入が進むと見込まれることから、2024〜2029年度の年平均成長率は11.8%と予測されており、営業のデジタル化への投資が単年で終わらず継続的に広がっていることを示しています。
※出典:ITR「ITR Market View:SFA/MA市場2026」
セールステックのカオスマップ
カオスマップとは、特定の業界に属するサービスやツールを一枚の図にまとめた「業界地図」です。市場全体の動向や、どの領域にどんなプレイヤーがいるかという勢力関係を、俯瞰して把握できます。
セールステックは領域が広く、ツールの数も多いため、カオスマップで全体像をつかむと理解が進みます。国内のセールステックを整理したものとして、株式会社マツリカが作成した国産カオスマップ「Japan SalesTech Landscape」があります。CRMやSFAは、このマップのなかで営業活動の中核データを担う位置づけとして描かれています。
セールステックの7つのカテゴリー
セールステックはCRMやSFAだけを指すものではありません。営業の各プロセスに対応する形で、7つのカテゴリーに整理できます。自社のどの業務に課題があるかを起点に見ていくと、必要なツールの当たりがつけやすくなります。
なお、国内版のJapan SalesTech Landscape 2024では、41カテゴリー・259ツールまで細分化して整理されています 。
営業加速ツール(Sales Enablement & Acceleration)
営業プロセス全体を改善・加速させるツールです。対応範囲が広く、案件管理から次のアクション提案までをカバーします。
たとえばMazrica Salesは、蓄積した営業データからAIが受注確度・契約日・受注金額を予測するAIインサイトを備えています(Growth以上)。過去の類似案件と照らし合わせ、いま対応すべきリスクを可視化することで、勘に頼らない案件判断を支援します。なおこの予測はAIが生成する推定であり、そのまま確定値として扱うものではありません。
関連記事:セールスイネーブルメントとは?事例や実施方法・おすすめ書籍を紹介
カスタマーサポートツール(Customer Support)
顧客からの問い合わせやサポート対応を一元管理するツールです。メール、チャット、電話などの窓口を集約し、対応の抜け漏れや品質のばらつきを抑えます。代表的なツールにZendesk、Freshdesk、メールディーラーなどがあります。
インテリジェンス・解析ツール(Intelligence and Analytics)
蓄積されたデータから顧客インサイトを抽出し、営業活動を強化するためのツールです。BIツールがこの領域の代表格で、売上や商談データを多角的に分析し、次の打ち手を導きます。
顧客関係管理ツール(General CRM)
顧客との関係性を見える化するツールです。日本で最もなじみ深いカテゴリーで、顧客情報や接点履歴を蓄積し、組織で共有します。Mazrica Salesも顧客管理・案件管理を担うツールとしてこの領域に該当します。
関連記事:CRMとは?導入メリットや機能、ツールの選び方/活用例を解説
顧客体験ツール(Customer Experience)
顧客が製品・サービスと接する体験、カスタマージャーニー全体の質を高めるツールです。Webサイト上での行動に応じた接客をするKARTE(プレイド)などが挙げられます。
コンタクト・コミュニケーションツール(Contact & Communication)
コールセンターやチャットを通じた顧客とのコミュニケーションを向上させるツールです。IntercomやConversicaなど、問い合わせ対応の自動化・効率化を担うサービスがこの領域に含まれます。
人材開発・コーチングツール(People Development & Coaching)
営業人材の育成に特化したツールです。新人のオンボーディング、ロールプレイングによるトレーニング、営業スキルの評価などを支援し、チーム全体の底上げを図ります。
セールステックの導入は業績と相関するのか

株式会社マツリカが実施した調査「Japan Sales Report 2022」では、セールステックツールの導入有無・導入個数と業績のあいだに相関がみられました。とくにツールを3個以上導入している企業では、業績が好調な傾向が顕著に表れています(出典:株式会社マツリカ「Japan Sales Report」)。
単一のツールを入れて終わりにするのではなく、営業の複数プロセスをテクノロジーで支える体制を組んでいる企業ほど、成果につながりやすいと読み取れます。
自社の営業課題からツールを絞り込む方法
ツールが多いだけに、選定は迷いやすいところです。カテゴリーの多さに引きずられるのではなく、自社の営業課題を起点に絞り込むのが失敗しないコツです。判断軸は、次の4点に整理できます。
- 自社の営業課題:商談数・受注率・単価・工数のどこが詰まっているか。営業生産性は「商談数 × 受注率 × 単価 ÷ 工数」で決まるため、ボトルネックがどこかを先に特定する
- 既存ツールとの連携可否:いま使っているメール、カレンダー、会計ツールなどと連携できるか
- 定着しやすいUI/UX:現場が入力を続けられるか。使われないツールはデータが溜まらず意味をなさない
- スモールスタートの可否:最初から全社導入せず、小さく始めて効果を確かめられるか
どのカテゴリーから入るかは、詰まりどころで判断します。顧客情報や案件情報が担当者ごとに散在しているならCRM・SFAから、そもそも商談につながるリードが足りないならMA(マーケティングオートメーション)から着手するのが定石です。営業の型を組織で共有したい段階なら、営業加速ツールが有力な選択肢になります。
関連記事:SFAとは?機能・導入メリット・選び方と定着のコツまで解説
セールステック時代の営業に求められるスキル
ツールが営業を支えるようになっても、人が担う役割がなくなるわけではありません。むしろ、テクノロジーを使いこなし、データを読み解いて判断する力が、これまで以上に問われます。自動化できる作業を任せた分、人はより高度な仕事に集中する構図です。
テクノロジーの知識
どのツールが何を解決するのかを理解する力です。自社の課題とツールの機能を結びつけて考えられなければ、導入は的外れになります。
デジタルスキル
ツールを実際に使いこなす力です。データを正しく入力し、機能を業務に組み込んで運用に乗せられるかが問われます。
コミュニケーション・ヒアリング能力
ツールが定型業務を担う分、人は顧客との対話にリソースを割けます。相手の課題を引き出すヒアリング力や、信頼関係を築くコミュニケーション力の重要性はむしろ増します。
データの読み取り・判断力
蓄積されたデータや、AIが示す予測・示唆を読み解き、次のアクションを決める力です。ツールが出した数字をそのまま受け取るのではなく、意味を解釈して意思決定に活かす力が営業の差を生みます。
よくある質問
セールステックとは何ですか?
営業(Sales)にテクノロジー(Technology)を活用して、営業活動を最適化・効率化するツールや手法の総称です。CRM、SFA、BIツールなどが代表例です。
テックセールスとセールステックの違いは?
テックセールスはSaaSやIT製品を扱う営業職という「職種」を指します。セールステックは営業活動を支える技術・ツールを指す言葉で、両者は別の概念です。
セールステックの市場規模はどのくらいですか?
ITRの調査では、国内SFA市場の2024年度売上金額は617億円で前年度比14.9%増、2024〜2029年度の年平均成長率は11.8%と予測されています(出典:ITR「ITR Market View:SFA/MA市場2026」)。
セールステックにはどんなツールが含まれますか?
営業加速ツール、カスタマーサポートツール、インテリジェンス・解析ツール、顧客関係管理ツール(CRM)、顧客体験ツール、コンタクト・コミュニケーションツール、人材開発・コーチングツールの7カテゴリーに大別できます。
中小企業でもセールステックは導入できますか?
導入できます。全社一斉ではなく、まず課題の大きい領域のツールを少人数で試すスモールスタートが現実的です。多くのSFA・CRMは少人数から契約でき、効果を確かめながら段階的に広げられます。
まとめ|自社の営業課題からカテゴリーを選ぶ
セールステックは領域が広く、全部を一度に導入する必要はありません。大切なのは、自社の営業のどこが詰まっているかを見極め、そこに効くカテゴリーから始めることです。
顧客・案件情報が属人化しているならCRM・SFA、商談数が足りないならMA、営業の型を組織で作りたいなら営業加速ツールが第一候補になります。株式会社マツリカの調査でも、複数ツールを組み合わせて営業プロセスを支える企業ほど業績が好調な傾向がみられました。
まず取り組むべきは、自社の営業生産性(商談数 × 受注率 × 単価 ÷ 工数)のどこがボトルネックかを特定することです。そのうえで該当カテゴリーのツールを1つ選び、小さく始めて効果を確かめながら広げていきましょう。顧客・案件管理から着手する場合は、SFA/CRMである「Mazrica Sales」の概要資料をご覧ください。
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