売上目標は決まっているのに、具体的な計画への落とし込み方が分からない。そうした状況に置かれている営業担当者やマネージャーは少なくありません。
営業計画は「書けばよい」ものではなく、現状データに基づいて目標を逆算し、実行可能なアクションまで落とし込むことで初めて機能します。この記事では、営業計画書に必要な項目、書き方のポイント、立て方の手順、計画が未達になる原因と対策まで、実際に計画を作成できる状態を目標に解説します。
この記事の内容
営業計画とは
営業計画とは、営業戦略に基づき、売上目標を達成するための数値目標や行動計画を具体化した実行計画です。勘や経験だけに頼るのではなく、現状データから目標を逆算し、プロセスごとに必要な行動を定義することで、チーム全員が同じ方向に向かって動けるようになります。
営業計画・営業計画書・行動計画の違い
「営業計画」「営業計画書」「行動計画(アクションプラン)」は混同されがちですが、それぞれ役割と粒度が異なります。
| 用語 | 位置づけ | 期間・粒度 |
|---|---|---|
| 営業計画 | 戦略レベル。目標・ターゲット・KPI・施策の全体設計 | 年度・半期・四半期 |
| 営業計画書 | 営業計画を文書化したもの | 同上 |
| 行動計画(アクションプラン) | 個人やチームが日々実行する具体的な行動レベル | 週次・月次 |
よくある失敗は「営業計画書はあるが行動計画がない」、あるいは「日々の行動計画だけあって全体設計がない」というケースです。営業計画と行動計画は、セットで運用して初めて機能します。
営業計画を立てるメリット
営業計画を立てることで、3つの効果が期待できます。
1つ目は、課題の所在が構造的に把握できることです。目標に対してどのプロセスに課題があるのか(リードが足りないのか、受注率が低いのか、単価が低いのか)を特定できます。
2つ目は、数値目標の根拠をチームで共有できることです。各メンバーが「自分の数値が全体のどこに影響するか」を理解した状態で動けるため、チームの方向性がそろいやすくなります。
3つ目は、改善のための検証軸が生まれることです。計画がなければ何と比較して振り返るかが定まりません。計画と実績の乖離を把握することで、具体的な改善策を検討できるようになります。
営業計画書に必要な10項目
10項目を埋めることが目的ではなく、内部要因と外部要因を整理したうえで、目標とアクションを設計するための枠組みとして使うことが重要です。以下の項目を順に整理することで、抜け漏れのない計画書が完成します。
ミッション
自部門・チームが果たすべき役割と存在意義を明文化します。「新規顧客の開拓を通じて事業成長を実現する」といった表現が具体例です。ミッションがないと目標の背景が共有されず、施策が個別最適に陥りやすくなります。
ターゲット
自社の製品・サービスが最も価値を提供できる顧客像を定義します。業種・規模・地域・課題の観点で絞り込み、「製造業、従業員100〜300名、首都圏、営業管理のデジタル化を検討中」のように記述することで、アプローチ先が明確になります。
ポジショニング
競合と比較したときに自社がどの領域で優位性を持つかを整理します。後述のSTP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を活用すると、体系的に整理できます。
チーム体制
インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスなど、各役割の担当者と役割分担を明記します。「誰が何を担うか」が明示されていないと、引き渡しのタイミングで案件が止まる可能性があります。
予算
目標達成に必要な活動コスト(広告費・ツール費・交通費・イベント費など)を見積もります。売上目標とコストを対比することで、投資対効果を判断する基準が生まれます。
必要なツール
SFA/CRM・MA・商談ツールなど、活動に必要なシステムを列挙します。必要なツールを整理することで、不足しているツールや運用課題も把握できます。
営業目標(KGIとKPI)
KGI(Key Goal Indicator)は最終的な成果指標、KPI(Key Performance Indicator)はKGIに到達するためのプロセス指標です。両者を混同すると、行動と結果の因果関係が不明確になります。
設定例として、KGIは「年間売上7,200万円」、KPIは「月間新規商談15件・受注率25%・平均単価160万円」のように、KGI達成に必要なプロセス指標を定義します。
マーケティング戦略
リード獲得のチャネル(Web流入・インバウンド・展示会・パートナー経由など)と、各チャネルの目標件数を整理します。必要に応じてマーケティングとの連携方針も計画書に含めることで、チャネルごとの責任が明確になります。
新規案件獲得戦略
新規顧客獲得のアプローチ方法(テレアポ・メール・SNS・紹介など)と、それぞれの目標件数を定義します。「どのチャネルからどれだけのリードを獲得するか」が明確でないと、活動が属人的になりやすくなります。
具体的なアクションプラン(行動計画)
週次や月次単位で「誰が・何を・いつまでに・どれだけ行うか」を定義します。「月間架電200件・提案書提出10件・訪問商談15件」のように数値化することで、日々の行動の優先順位が明確になります。アクションプランは全体の営業計画と紐づけて設計することが大切です。
営業計画の立て方:5つのステップ
精度の高い営業計画はデータに基づいて立てることが重要です。勘や経験だけに頼ると、目標と行動量のズレが生じやすく、計画が形骸化します。以下の5つのステップに沿って順に進めてください。
ステップ1:事前準備と現状データの収集
計画を立てる前に、以下のデータを集めます。
- 過去12か月の月別売上実績
- 新規受注件数・既存顧客からの受注件数
- 商談数・受注率・平均商談期間
- 平均受注単価
- リード数・商談化率
- 失注理由の分類と割合
- 担当者別の受注件数・活動量
これらが手元にない場合、まずExcelやSFA/CRMなどで営業データを継続的に記録・管理する仕組みを整えましょう。
ステップ2:営業プロセス全体を可視化する
データを収集したら、マーケティングからカスタマーサクセスまでの全体プロセスを可視化します。

一般的には、マーケティング(リード獲得)→ インサイドセールス(商談化)→ フィールドセールス(受注)→ カスタマーサクセス(継続・拡大)という流れが基本ですが、業種・ビジネスモデルによって各プロセスの比重は異なります。自社のプロセスがどの段階から始まり、どこで終わるかを先に定義することで、計画の範囲が明確になります。
ステップ3:プロセスごとの数値目標を逆算する
KGI(最終目標)を起点に、各プロセスの必要数値を逆算します。
月10件の受注を目標とする場合、受注率25%なら商談は40件必要になります。商談化率が50%であればリードは80件必要です。この逆算が計画の根拠になり、「どのプロセスを何件こなすか」が明確になります。
ステップ4:ボトルネックを特定する
逆算した数値と現状データを照合し、目標とのギャップが大きいプロセスや、転換率が最も低いプロセスを特定します。
すべてのプロセスを一度に改善しようとするとリソースが分散して成果につながりにくくなります。「リードから商談化の転換率が低いのか」「商談から受注の転換率が低いのか」を特定し、改善リソースを集中させることで、計画実行の効率が高まります。
ステップ5:目標数値とアクションプランを確定する
ボトルネックに対する改善アクションを複数パターン用意して確定します。1つのアクションがうまくいかなかった場合に備え、代替案を計画段階で準備しておくと、計画の柔軟性が高まります。「A案がうまくいかなければB案で補う」という考え方を持つと、状況の変化にも対応しやすい計画になります。
営業計画書の書き方のポイント4つ

計画書を「項目を埋める作業」にしないために、以下の4つのポイントを意識して作成してください。
営業課題・ボトルネックを把握してから書く
計画書を書く前に、現状の数値から課題の所在を確認することが先決です。「リードが足りない」「受注率が低い」「単価が低い」ではそれぞれ必要な改善策が異なります。課題を特定せずに計画を立てると、全プロセスに均等にリソースを配分することになり、結果として十分な改善につながらない可能性があります。
数値目標は根拠を持って設定する
「前年比10%増」という目標だけでは、チームの行動量との整合性が取れません。ステップ3で示した逆算の手順を使い、「この目標を達成するには商談が月○件必要で、そのためにリードが月○件必要」という形で根拠を記載します。根拠のある数値目標を設定することで、計画を具体的な行動につなげやすくなります。
STP分析で市場・ポジションを整理する
STP分析は、S(セグメンテーション:市場を細分化する)・T(ターゲティング:自社が狙うセグメントを選ぶ)・P(ポジショニング:競合の中での自社の位置づけを定義する)の3ステップで市場戦略を整理するフレームワークです。STP分析を行わずに営業計画を立てると、顧客のニーズに合わない提案をすべての顧客に届け続けることになります。ターゲットと自社の強みを先に定義することで、提案の一貫性と成功率が高まります。
営業戦略と営業戦術をセットで記載する
営業戦略は「どの市場に・どのアプローチで攻めるか」という方向性を示すものです。一方、営業戦術は「具体的に誰が・何を・いつ行うか」という実行手段です。戦略だけでは具体的な行動につながらず、戦術だけでは方向性が定まりません。計画書は、この2つをセットで記載することで、現場が迷わず動ける状態をつくります。
計画が未達になる3つの原因と対策
営業計画が計画通りに進まない原因は、多くの場合3つのパターンに分けられます。それぞれの原因と対策を理解することで、計画の精度と達成率が上がります。
受注の前倒しが引き起こす連鎖
月末の数値を達成するために、顧客に無理な要求をして受注を前倒しするケースです。顧客側には「契約を急かされた」という印象が残り、信頼が低下します。その結果、翌月以降のフォローアップが難しくなり、解約や追加案件の減少につながることもあります。
対策として、SFAでパイプラインの状況を常時把握し、月末だけでなく週次でアクション予測を確認する運用が有効です。受注の前倒しが起きやすい案件を、リスク案件としてフラグ管理することも防止策になります。
顧客都合による受注遅延への対応
社内承認プロセスの長期化、予算凍結、担当者の異動など、顧客側の事情で受注が遅延するケースは一定の確率で発生します。こうした状況を放置すると、期末の売上予測と実績に大きな差が生じる可能性があります。
案件ごとに「顧客の意思決定プロセスと関係者」をSFAに記録し、停滞しているフェーズを定期的にフォローする仕組みをつくることが対策です。定期フォローのスケジュールをアクション予定として登録しておくことで、担当者が動くタイミングを見逃しにくくなります。
受注予定の未報告を防ぐ仕組みづくり
「受注しそうな案件をSFAに入力していない」「受注見込みが担当者の頭の中にしかない」という状態は、予測と実績に差が生じる大きな原因になります。
マネージャーが把握していない案件は計画に反映されないため、月末に突然の受注や失注が出て、計画が大きく崩れます。SFAへの案件登録とフェーズ更新をルール化し、週次の商談報告をSFAのアクション入力で代替する運用に切り替えることが根本的な対策です。継続的な入力を定着させることが、正確なモニタリングの前提になります。
SFAを活用した営業計画の精度向上
Excelやホワイトボードを使ったKPI管理から移行するには、SFAによるデータを蓄積し、継続的に可視化できる状態をつくることが必要です。データが蓄積されるほど予測精度が上がり、計画と実績のズレを早期に検知できます。
データに基づく売上予測(フォーキャスト)の活用
Excelによる売上予測は担当者の主観的な「ヨミ」に依存しやすく、集計コストも高くなりがちです。SFAを活用することで、過去の受注データと現在の案件情報に基づいて客観的な予測が立てられます。
Mazrica SalesのAIフォーキャスト機能では、進行中の案件ごとに受注確度・契約金額・契約日の予測を自動で算出します。類似案件の成功・失敗パターンを参照しながら影響項目(リスク要因)を提示するため、マネージャーは注意が必要な案件を早期に把握できます。次のアクション候補も示唆されるため、担当者は次に何をすべきかに迷わず動けます。
計画と実績のギャップをダッシュボードで常時把握
営業計画は、立てた後に継続的に「モニタリングできるか」が重要です。Mazrica Salesでは標準レポート8種(売上予測・売上推移・売上実績・ファネル分析・アクション予測・アクション分析・アクション推移・フェーズ進捗)を設定不要で利用でき、計画と実績の乖離をリアルタイムで把握できます。
「商談数が足りないのか、受注率が低いのか」といった課題は、ファネル分析レポートで特定できます。カスタムレポートやダッシュボードを使えばKPIの組み合わせを自由に設定できます。なお、これらの機能はGrowth以上のプランで利用可能です。
AIを活用したモニタリングの実例

Mazrica SalesのAIインサイトは、案件データから進捗・リスク・次のアクションを提示します(Growth以上)。「今すぐ対応すべきリスク(行動リスク)」と「潜在的なリスク(傾向リスク)」を分類して表示するため、マネージャーは、感覚ではなくデータを根拠に案件を管理できます。
AIアシスタントは営業活動の履歴を自動要約し、要点・課題・次のアクションを抽出します。アクション内容から案件フェーズや契約金額の更新候補を提案し、項目単位でワンクリックで反映できるため、入力の負荷を下げながら情報を更新できます。
営業計画の策定・実行・モニタリングにMazrica Salesの活用を検討している方は、以下の資料で機能の詳細と導入事例を確認できます。
よくある質問(FAQ)
営業計画と営業戦略の違いは何ですか?
営業戦略は「どの市場・顧客に・どのように価値を提供するか」という方向性を定めるものです。営業計画は、その戦略を数値・スケジュール・具体的な行動に落とし込んだ実行設計です。戦略が先にあり、計画はそれを現場で動ける形に具体化するものです。戦略なき計画は方向性がバラバラになり、計画なき戦略は絵に描いた餅になります。
営業計画書に決まったフォーマットはありますか?
業種・ビジネスモデル・組織規模によって必要な項目は異なります。最低限「ターゲット・KGI/KPI・アクションプラン」の3つを整理できていれば営業計画として運用しやすくなります。本記事で示した10項目は網羅的な参考例であり、すべてを埋める必要があるかは自社の状況で判断してください。
営業計画はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
年度計画は四半期ごとに見直す企業が多いですが、市場環境や営業状況に応じて月次で確認・調整するケースもあります。SFAのダッシュボードを活用すれば計画と実績の乖離をリアルタイムで把握できるため、見直しの判断タイミングを逃しにくくなります。
個人営業とチーム営業で計画の立て方は変わりますか?
個人の場合は自分のKPIと行動計画が中心になります。チームの場合は、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスといったロールごとに役割と数値目標を分解し、各プロセス間の引き渡しタイミングを明確にする必要があります。部門・担当間の引き継ぎが曖昧なまま計画を立てると、案件が途中で滞る原因になります。
営業計画書と営業報告書の違いは何ですか?
営業計画書は「これから何をするか」の事前設計です。営業報告書は「何をしたか・結果はどうだったか」の事後記録です。両方をセットで運用することでPDCAが機能します。計画書だけあって報告書がなければ検証ができず、報告書だけで計画書がなければ何と照らし合わせるかが定まりません。
SFAを使わなくても精度の高い営業計画は立てられますか?
Excelでも営業計画を作成することは可能ですが、担当者・プロセス・フェーズを横断した数値集計や予測精度には限界があります。案件数が増えるほど手作業の集計コストが大きくなり、週次・月次のモニタリングが追いつかなくなります。SFAを活用すると集計や分析を効率化できるため、計画の実行や改善サイクルに集中できる環境をつくれます。Excelによる案件管理の限界については、以下の記事もあわせて確認してください。
関連記事:Excelでは限界!営業管理・データ管理を効率化する4つの方法
まとめ:再現性のある営業計画を組織に根づかせるために
営業計画は、作成すること自体が目的ではありません。計画に基づいて行動し、実績と比較しながら、改善を繰り返せる状態をつくることが本来のゴールです。
自社の状況に応じて、次のアクションを選んでください。
- 計画はあるものの実行されていない場合:ボトルネックの特定と、アクションプランの具体化を優先します。「何件商談すれば目標に届くか」を逆算し、週次の行動量に落とし込んでください。
- 計画はあるもののモニタリングできていない場合:SFAのダッシュボード・ファネル分析レポートを使って計画と実績の乖離を常時確認できる仕組みをつくることが次のステップです。
- 計画自体がない・感覚で動いている場合:まず営業プロセスの可視化と、プロセスごとのKPIを設定することから着手してください。現状のデータを集めてから目標を逆算することで、根拠のある営業計画書が作れます。
再現性のある営業活動には、計画・実行・検証のサイクルを回せる仕組みが必要です。データに基づく営業管理への移行を検討している方は、以下の資料も参考にしてください。
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