マルチスレッド営業とキーマン攻略|複数の接点を構築し意思決定者・推進者・利用者を並行して押さえる実践法
担当者とは何度も会えていて手応えもある。ところが最後に出てきた上長のひと言で稟議が止まる。あるいは、頼りにしていたキーマンが異動し、商談が振り出しに戻る。大手企業を相手にした長期商談で、こうした「あと一歩」の失注を繰り返してきた営業担当者は少なくありません。原因の多くは、キーマンを1人だけに絞って攻略する進め方そのものにあります。この記事では、1人のキーマンに賭けるのをやめ、意思決定者・推進者・利用者を並行して押さえるマルチスレッド営業の見極め方とアプローチ手順を、実務で動ける粒度で解説します。大手企業を狙う営業設計の全体像はエンタープライズ営業とABMの基本で解説しています。
マルチスレッド営業とは|複数の関係者を並行して押さえる考え方
マルチスレッド営業とは、1人のキーマンに依存せず、意思決定に関わる複数の関係者と同時並行で接点を持ち、それぞれと関係を築きながら案件を前に進める進め方です。従来の「キーマンを1人見つけて攻略する」シングルスレッドの進め方と対になる考え方で、大手企業ほど1つの発注に関与する人物が多いため、複数の糸(スレッド)を張っておくことが効いてきます。1本の糸が切れても案件が止まらない状態をつくるのが狙いです。以下で、両者の違いと、なぜこれが受注率に効くのかを掘り下げます。
シングルスレッドとマルチスレッドの違い
シングルスレッド営業は、案件を動かせそうな人物を1人特定し、その1人との関係を軸に商談を進めます。窓口がシンプルで動きやすい反面、その1人が異動・退職したり、返信が止まったりした瞬間に、案件を進める糸がなくなります。
マルチスレッド営業は、意思決定に関わる複数の人物と同時に接点を持ちます。担当者が窓口であっても、その上位の決裁者、社内で話を通す人、実際に使う現場の人にも個別に関係を築いていきます。接点が複数あることで、1人からの情報が止まっても別の関係者から検討状況を把握でき、案件の進行が特定個人の都合に左右されにくくなります。
マルチスレッド営業が受注率に効く理由
売上・利益の最大化は、営業生産性の最大化とほぼ同義です。マツリカでは営業生産性を「商談数 × 受注率 × 単価 ÷ 工数」で整理しています。マルチスレッド営業が直接効くのは、このうち受注率です。
大手の商談が落ちる典型が、担当者レベルでは合意できても最終決裁で覆される、あるいは検討が組織内で止まったまま見えなくなるパターンです。意思決定者・推進者・利用者を並行して押さえておけば、最終決裁のハードルや反対者の懸念を商談の早い段階で把握でき、稟議が止まる前に手を打てます。個々の商談の突破率を上げる打ち手であり、商談数を増やす前に既存の案件を確実に受注へ運ぶための考え方です。
「キーマン攻略」を1人攻略と誤解しない
「キーマン攻略」という言葉は、しばしば「発注を決められる1人を見つけて口説く」という意味で使われます。この理解自体が、シングルスレッドの発想に読者を縛ります。
大手企業では、1人ですべてを決められる人物はまれです。予算を承認する人、社内で稟議を回す人、導入後に実際に使う人が別々に存在し、それぞれが「NO」と言えば案件は止まります。キーマン攻略の本質は「1人を探す」ことではなく、「案件を止められる複数の関与者を漏れなく押さえる」ことにあります。この記事では以降、キーマンを1人ではなく複数の役割の集合としてとらえ直します。
なぜ1人のキーマン攻略だけでは案件が止まるのか
キーマンを1人に絞って攻める進め方は、その1人が異動・退職・沈黙した瞬間に案件が消えるという構造的なリスクを抱えます。上位のノウハウ記事の多くは「キーマン=1人」を前提にアプローチ方法を語りますが、その1人が案件から抜けたときにどうなるかにはほとんど触れていません。ここでは、シングルスレッドが陥る具体的な詰まり方を4つの角度から整理します。どれも大型案件で実際に起きる失注の型です。
キーマンが異動・退職すると案件がゼロに戻る
大手企業では人事異動や組織改編が定期的に起こります。半年から1年をかける長期商談の途中で、頼りにしていたキーマンが別部門に異動すれば、これまで積み上げた関係と社内での推進役を一度に失います。
後任者は前任の検討経緯を必ずしも引き継いでいません。関係構築を一から始めることになり、競合に振り出しからの再検討を許すことにもなります。接点がその1人しかなければ、異動の一報でパイプラインから案件が消えます。逆に、その部門の別の関係者や上位の決裁者とも接点があれば、後任への引き合わせを依頼でき、検討の継続性を保てます。
反対者(ブロッカー)の存在に最後まで気づけない
前向きなキーマン1人としか話していないと、その人物の視界に入っている情報しか手に入りません。社内には、予算配分に反対する管理職や、現行の運用を変えたくない部門など、導入に慎重な関与者がいることがあります。
前向きな担当者は、社内の反対の声を営業に伝えないか、そもそも把握していないことがあります。反対者の懸念は稟議の最終段階で表面化しやすく、そこで初めて存在に気づいても、切り返す材料を用意する時間がありません。複数の関係者と話していれば、検討に慎重な人物の存在や懸念の中身を早い段階で拾えます。
検討が組織内で止まっても状況が把握できない
窓口の担当者からの連絡が途絶えると、シングルスレッドでは検討がどこまで進んだのか、どこで止まっているのかがまったく見えなくなります。予算化の議論が長引いているのか、優先順位が下がったのか、他案件と比較されているのかを確かめる手段がありません。
意思決定者や推進者にも接点があれば、担当者以外のルートから検討状況を確認できます。案件がどのフェーズで滞留しているかを把握できれば、次に打つ手を選べます。接点を複数化することは、検討状況の可視性そのものを高めます。
単一接点は属人化しやすく引き継げない
キーマン1人との関係が特定の営業担当者の頭の中と個人的なやり取りだけに存在すると、その情報はチームに残りません。担当者が休んだり退職したりすれば、誰がキーマンで、どんな経緯でどこまで話が進んでいたかが引き継がれません。
これは案件情報だけでなく、関係者の役割や社内の力関係といった、受注確度を左右する情報が失われることを意味します。関与者が1人に限られているほど、その関係は属人化しやすく、組織の資産になりません。関係者を増やし、その情報をチームで共有する前提で動くことが、失注リスクの低減につながります。
意思決定者・推進者・利用者を見極める方法
大手の意思決定に関わる人物は、「決裁する人(意思決定者)」「社内で話を進める人(推進者)」「実際に使う人(利用者)」の3つの役割で整理すると漏れなく押さえられます。まずこの3役割を役割ごとに定義し、そのうえで、企業規模・組織構成・沿革・商談中のヒアリングという4つの手がかりから、誰がどの役割かを特定していきます。役割で整理する目的は、次に会うべき相手と、その人に何を伝えるべきかを明確にすることです。
意思決定者・推進者・利用者の違い
意思決定者は、最終的に予算を承認し、発注の可否を決める人物です。多くの場合、部門長や役員クラスで、関心事は投資対効果と経営課題への貢献です。ここで注意したいのが、決裁者と意思決定者は必ずしも同一ではないという点です。稟議規程上の決裁権を持つ人物(決裁者)と、その案件を「やろう」と実質的に判断する人物(意思決定者)がずれることがあります。金額によって決裁権者が変わる企業も多く、稟議の形式的なハンコと実質的な判断は分けて考える必要があります。
推進者は、社内で提案を前に進める人物です。稟議を書き、関係部署を調整し、意思決定者に上申します。役職としては課長・係長クラスや、導入を主管する部門の担当者が担うことが多く、関心事は「社内でこの案件を通せるか」です。営業にとって最も密に連携すべき相手です。
利用者は、導入後に実際にその製品やサービスを使う現場の人です。関心事は日々の使い勝手や業務負荷で、現場での評価が意思決定者の判断や推進者の稟議に影響します。発言力のある利用者は、無視できない影響力を持ちます。
企業規模から関与者の広がりを読む
企業規模が大きくなるほど、1つの発注に関与する人物と決裁の階層が増えます。従業員数十名の企業なら社長や役員が意思決定者と利用者を兼ねることもありますが、数千名規模の企業では、稟議が現場から部門長、役員、購買部門へと何段階も上がります。
商談準備の段階で、相手企業の従業員数・拠点数・事業構成をおさえておくと、関与者の広がりを事前に見積もれます。大手であれば、担当者1人との接点で完結すると考えず、少なくとも意思決定者と推進者の2役割は別人物として想定しておくのが現実的です。
組織構成から意思決定者と推進者を特定する
相手企業の組織図がわかれば、担当者の上位ラインをたどって意思決定者の候補を、担当者と同格・近接の職位から推進者の候補を推定できます。部門の分かれ方から、稟議に関わる関係部署(情報システム部門、購買部門、法務など)も見えてきます。
ただし、組織図の上下関係が実際の決裁権と一致するとは限りません。組織図はあくまで候補を洗い出すための出発点で、誰が実質的な判断をするかは商談の中で確かめる必要があります。この点は後段の失敗パターンで詳しく扱います。
沿革・事業内容から課題の所在を推定する
相手企業の沿革・主力事業・直近の動きからは、その会社がいま何を課題としているかを推定できます。新規事業を立ち上げたばかりなら投資に前向きな部門があり、コスト削減を掲げているなら効率化を主管する部門が推進者になりやすい、といった見立てが立ちます。
課題の所在が読めれば、どの部門の誰に響く提案かが見え、意思決定者・推進者・利用者の当たりをつけやすくなります。公開されているニュースやプレスリリース、上場企業であれば有価証券報告書の「対処すべき課題」「事業等のリスク」といった記載も、課題を読む材料になります。
商談中のヒアリングで役割を確かめる質問
企業情報から立てた見立ては、必ず商談の中で検証します。役割を確かめる質問を、商談の自然な流れで挟み込むのが実務のコツです。
たとえば「この件は最終的にどなたの承認が必要になりますか」で意思決定者を、「稟議を上げるとき、どの部署の合意が要りますか」で推進者と関係部署を、「実際に使われるのはどのチームの方ですか」で利用者を確認できます。「過去に似たツールを検討されたとき、社内でどんな意見が出ましたか」と聞けば、反対者の存在や懸念のパターンも拾えます。窓口の担当者に「あなたの上司がキーマンですか」と直接聞くのではなく、決裁のプロセスを事実として尋ねるのが要点です。
3つの役割ごとのアプローチ設計
役割が違えば響く提案軸が違うため、意思決定者には投資対効果、推進者には社内で通しやすい材料、利用者には現場の使い勝手を、それぞれ用意します。同席依頼・展示会・手紙・テレアポといったアプローチ手法は、どれも有効ですが、闇雲に使うのではなく「どの役割に、何を届けるために使うか」で選び分けます。ここでは役割別の提案軸と、接点を広げる具体的なきっかけ、そして進める順番を整理します。
意思決定者へのアプローチ
意思決定者に響くのは、この投資が経営課題の解決にどうつながるかと、投資対効果です。現場の機能説明ではなく、導入によって何がどれだけ改善し、それが会社の目標にどう寄与するかを、数字と経営の言葉で示します。
意思決定者と直接会う機会は限られるため、推進者や担当者に商談への同席を依頼し、短時間で経営視点の訴求ができるよう準備します。同時に、意思決定者が稟議書で目を通す前提で、投資対効果を明確にした資料を推進者経由で渡しておくことが効きます。
推進者へのアプローチ
推進者は、社内で提案を通す実務を担う人物です。ここへのアプローチの核は、推進者が社内を動かしやすくする材料を提供することにあります。稟議書に転記しやすい費用対効果の整理、想定される反対意見への回答集、他部署への説明資料など、推進者の社内調整を肩代わりするイメージで支援します。
決裁権者に相談・上申しやすい形の資料を用意することは、推進者を味方につけるうえで有効です。推進者にとって「この営業と組めば社内で通しやすい」と感じられる関係を築ければ、案件は自走します。営業が最も時間を割くべき相手です。
利用者へのアプローチ
利用者には、現場の課題を丁寧にヒアリングし、日々の業務でどう使い勝手が良くなるかを具体的に訴求します。現場が「これなら使いたい」と評価すれば、その声は推進者の稟議や意思決定者の判断を後押しします。
逆に、利用者が使いにくさを懸念すると、それが導入の反対理由になります。デモやトライアルを通じて現場に実際に触れてもらい、使う人の納得を積み上げることが、後工程での反対を防ぎます。
接点を広げるきっかけ
複数の役割に接点を持つには、まず既存の担当者を起点に紹介を依頼するのが最も自然です。「導入後に実際に使われる現場の方にもお話を伺えますか」「投資判断をされる方に一度ご説明する機会をいただけますか」と、目的を添えて紹介を求めます。
担当者経由で広げにくい場合は、外部イベントや展示会での面談、手紙やコールドメールで別の関係者に直接アプローチする手もあります。役職者宛ての手紙は、テレアポやメールで届きにくい層への接点として機能することがあります。
アプローチの順番と並行のバランス
3役割を一度にすべて攻めるのではなく、まず信頼できる担当者との関係を固め、そこを起点に上下左右へ接点を広げていきます。担当者との信頼が接点拡大の推進力になるため、最初の関係づくりを疎かにしないことが前提です。
ただし、担当者1人を潰してから次、という直列の進め方では時間がかかりすぎます。担当者との関係を深めつつ、並行して推進者・利用者への紹介を依頼し、意思決定者への同席機会をうかがう、という並行の姿勢を持ちます。1本の糸に頼らず、常に複数の糸を張っている状態を保つことが、マルチスレッド営業の実践です。
よくある失敗|担当者の直属の上司をキーマンと決めつける
「担当者の上司=キーマン」という思い込みは、実際の決裁ルートを外して案件を止める典型的な失敗です。組織図上の上下関係と、実際に予算を握り稟議を左右する人物は一致しないことがあります。上司を攻めても案件が動かないのは、その人物が実質的な意思決定者でも推進者でもないからです。ここでは、決めつけが招く3つの失敗の型を挙げ、それを避けるための着眼点を示します。
組織図の上下関係と実際の決裁権はずれる
担当者の直属の上司が、必ずしもその案件の意思決定者とは限りません。金額によって決裁権者が上位に上がる企業では、課長では決められず部長・役員の承認が要ることがあります。逆に、直属の上司より、予算を持つ別部門の管理職が実質的な判断を握っているケースもあります。
組織図はあくまで候補の出発点であり、実際の決裁ルートは商談の中で「この金額だとどなたの承認まで必要ですか」と事実として確認します。上下関係の見た目に引きずられず、予算と稟議の実態を押さえることが、無駄なアプローチを避ける鍵です。
現場のインフルエンサー(発言力のある利用者)を見落とす
役職は高くなくても、現場で発言力を持つ利用者が判断を左右することがあります。実務に精通したベテランや、部門内で信頼の厚い担当者の評価が、意思決定者の最終判断を動かすケースです。
組織図の上位だけを見ていると、こうした横のインフルエンサーを見落とします。利用者の中に、周囲の意見をまとめる人物がいないかを商談で見極め、その人物の納得を得ておくことが、土壇場での反対を防ぎます。
反対者を放置して土壇場で覆される
前向きな担当者やその上司とだけ話を進め、社内の反対者を放置すると、稟議の最終段階で覆されます。反対者は、予算の使い道に異論を持つ管理職や、現行運用の変更を望まない部門であることが多く、その懸念は最後まで営業に届きにくいのが厄介な点です。
反対者の存在を早期に察知し、その懸念に先回りして材料を用意しておくことが、失注を防ぎます。上司をキーマンと決めつけて安心していると、この見えない反対のラインを見逃します。
商談を点検するチェック観点|今の案件は何スレッドで動いているか
案件が止まりやすい組織ほど、接点が1人・1スレッドのまま停滞している商談を多く抱えています。だからこそ、進行中の案件を「関与者の数」と「役割のカバー状況」で点検すると、次に会うべき相手がはっきり見えてきます。ここでは、進行中の1案件をその場で点検できるチェックリストと、点検結果から次のアクションを決める手順を示します。マルチスレッド化は、現状の可視化から始まります。
点検リスト
進行中の案件について、次の観点で現状を確認します。
- 接点が担当者1人に限られていないか
- 意思決定者(予算を承認する人)と接点があるか
- 推進者(社内で稟議を進める人)を特定できているか
- 利用者(実際に使う現場)の声を聞けているか
- 反対者(導入に慎重な関与者)を把握できているか
- 関係者の情報がチームで共有され、担当者以外も状況を追えるか
このうち「いいえ」が多い案件ほど、シングルスレッドで停滞するリスクが高い状態です。特に、接点が担当者1人だけで、意思決定者にも反対者にも触れられていない案件は、要注意のパイプラインです。
点検結果から次アクションを決める
点検で見えた「接点が足りない役割」に対して、次の一手を具体的に決めます。意思決定者との接点がなければ、担当者に同席を依頼する。推進者が特定できていなければ、稟議のプロセスを商談で確認する。利用者の声を聞けていなければ、現場へのヒアリングやデモの機会を設ける、という具合です。
すべての役割を一度に埋めようとせず、案件のフェーズと重要度に応じて、次に押さえるべき1人を決めて動くのが現実的です。点検を定期的に繰り返せば、案件の抜け漏れが早期に見つかり、失注の前兆を先取りできます。
関係者情報を可視化し、チームで攻略する
マルチスレッド営業は関与者が増えるほど、誰がどの役割で、どんな接点があるかを個人の記憶に頼らず共有できる状態が、受注率を左右します。属人化を防ぐには「関係者・接点の一元化」と「アプローチ手順の標準化」という2つの軸を両輪で回す必要があります。情報を集めるだけでなく、誰がやっても一定の質で関与者を押さえられるプロセスを整えることが要点です。ここでは、その実務を支える仕組みを、機能の一例として紹介します。
関係者・接点を一元管理する
複数の関与者を扱うマルチスレッド営業では、「誰が意思決定者・推進者・利用者か」「誰がどの接点を持っているか」を記録し、チームで共有できる状態が欠かせません。担当者の頭の中や個人のメモに情報が残ると、異動や退職で失われ、属人化します。
SFA/CRM(営業支援システム/顧客関係管理)のコンタクト管理では、取引先ごとに担当者の連絡先・所属・接点履歴を蓄積し、案件と関連付けて管理できます。関与者を役割でラベルづけして記録しておけば、次に会うべき相手や、まだ接点のない役割がチームの誰から見てもわかります。親会社・子会社をまたぐ大手であれば、取引先の階層管理で組織のつながりも整理できます。
AIによる組織構造・人物情報の把握
商談準備の段階で、相手企業の組織構成や関係者の情報を集めるのは手間がかかります。ここを効率化する手段として、企業データベースを使う方法があります。
例えば Mazrica Target のような企業データベースでは、約560万社の企業DBをもとに、AIが対象企業の組織図や人物情報を生成・推定し、会うべき相手の特定と提案準備を早められます。組織図や人物情報はAIが生成・推定するものであるため、正確性は必ず商談の中で確認する前提で使います。Mazrica Target は他社のSFA/CRMと組み合わせても、単独でも利用できます。
案件の進捗とリスクをチームで把握する
関与者を可視化したら、次は案件全体の進捗とリスクをチームで追える状態をつくります。どの案件がどのフェーズで止まっているか、どの関与者への接点が抜けているかを、担当者以外も把握できることが、失注の前兆を早期に拾う条件です。
例えば Mazrica Sales のようなSFA/CRMでは、取引先を起点にコンタクト・案件・接点履歴を一元管理し、案件ボードで案件の停滞を色で可視化できます。直近のアクション状況に応じて、1週間以内にアクションがあれば青、1か月以内なら黄、1か月以上アクションがなければ赤と色分けされ、放置されている案件がひと目でわかります。案件データから進捗・リスク・次アクションを読み解くAIインサイトや、取引先の階層管理はGrowth以上のプランで利用できます。
まとめ
複数の部門をまたぐ長期の大型案件を扱う組織なら、キーマンを1人探すという発想をやめ、意思決定者・推進者・利用者の3役割で関与者を点検することから始めるのが現実的です。1人のキーマンに賭ける進め方は、その人物が異動・退職・沈黙した瞬間に案件を失う構造的なリスクを抱えます。複数の糸を張っておくことが、大型案件の受注率を安定させます。
最初の一歩は小さく始められます。まずは進行中で最も大きい1案件について、いまつながっている相手が何人で、それぞれ意思決定者・推進者・利用者のどの役割かを書き出してみてください。接点のない役割が見えたら、そこが次に手を打つべき相手です。関与者が増えてきたら、記録と共有を個人の記憶に頼らず、チームで追える仕組みに移していきます。
大手企業を攻略する営業設計の全体像はエンタープライズ営業とABMを参照してください。1社ごとの攻略計画に落とし込む段階ではアカウントプランの作り方、大手攻略の進め方全体はエンタープライズ営業の進め方が参考になります。
よくある質問
Q キーマンと意思決定者、決裁者は同じ意味ですか?
厳密には異なります。意思決定者は「その案件をやろう」と実質的に判断する人物、決裁者は稟議規程上の決裁権を持つ人物で、金額によって決裁権者が変わる企業では両者がずれることがあります。キーマンはこれらを含む、案件を左右する重要人物を広く指す言葉です。この記事では、案件を止められる関与者を意思決定者・推進者・利用者の3役割で整理し、1人のキーマンに絞らない見方を勧めています。
Q 担当者から上位の関係者を紹介してもらうには、どう切り出せばよいですか?
紹介の目的を具体的に添えるのがコツです。「投資判断をされる方に一度ご説明する機会をいただけますか」「導入後に実際に使われる現場の方のお話も伺いたいのですが」と、なぜその人に会いたいかを担当者にとってのメリット(社内で通しやすくなる、現場の納得が得られる)とあわせて伝えると、紹介が動きやすくなります。担当者との信頼関係を先に固めておくことが前提です。
Q キーマンにどうしても会えないときはどうすればよいですか?
直接の面談が難しい場合は、代替ルートを使います。推進者や担当者に稟議書へ転記しやすい資料を渡し、間接的に意思決定者へ訴求を届ける方法が現実的です。役職者宛ての手紙は、テレアポやメールで届きにくい層への接点として機能することがあります。展示会や外部イベントでの面談も、フォーマルなアポとは別の接点になります。
Q 中小企業でもマルチスレッド営業は必要ですか?
企業規模で必要度は変わります。小規模な企業では社長や役員が意思決定者・推進者・利用者を兼ねることが多く、少数の接点で完結しやすいため、マルチスレッドの必要性は下がります。一方、従業員数百名を超える企業や、複数部門が関わる案件では、決裁の階層と関与者が増えるため、マルチスレッド営業の効果が大きくなります。相手の規模と稟議の複雑さで判断します。
Q 反対者(ブロッカー)が見つかったらどう対応しますか?
放置せず、懸念を先に潰すのが基本です。反対の理由が予算なのか、運用変更への抵抗なのか、過去の失敗経験なのかを見極め、それぞれに応える材料を用意します。可能なら反対者本人と接点を持ち、懸念を直接ヒアリングして解消に動きます。難しければ、推進者に反対意見への回答集を渡し、社内で先回りして説明してもらう形をとります。稟議の最終段階で表面化する前に手を打つことが重要です。
Q 関係者が多くて情報を管理しきれません。どう整理すればよいですか?
関与者を役割でラベルづけし、チームで共有する仕組みに乗せるのが有効です。誰が意思決定者・推進者・利用者・反対者かを記録し、それぞれの接点履歴を残しておけば、次に会うべき相手や抜けている役割が見えます。SFA/CRMのコンタクト管理を使えば、取引先ごとに関係者と接点を一元管理でき、担当者以外もチームで状況を追えます。個人のメモに頼ると異動・退職で情報が失われるため、記録の共有を前提に運用します。







