インサイドセールスの役割と位置づけ|営業組織における責任範囲・KPI・他部門との連携で商談創出を最大化する
分業体制でインサイドセールスを立ち上げたものの、マーケティングやフィールドセールスとの役割境界が曖昧で、トスアップ(商談の引き渡し)のたびに「まだ早い」「情報が足りない」と揉めている。あるいはKPIが架電数に偏り、メンバーが数字を追うだけで疲弊している。こうした悩みの多くは、責任範囲とKPIの設計が定義されていないことから生まれます。
インサイドセールスの役割は「非対面で見込み客を育成し、商談化した案件を基準に沿ってフィールドセールスへ渡すこと」であり、その成果は営業生産性の「商談数」に効きます。役割定義の肝は、責任範囲の境界(どのリードから対応し、いつフィールドセールスへ渡すか)とトスアップ基準を明文化することにあります。営業分業の中でのインサイドセールスの位置づけを起点に、責任範囲の切り分け、KPI設計の落とし穴、マーケティングとフィールドセールスとの連携設計までを実務目線で整理します。
定義や種類、テレアポとの違いといった体系的な全体像はインサイドセールスとはを参照してください。本記事は、そのうち「役割・責任範囲・KPI・連携」に絞って深掘りします。
営業分業(The Model)の中でのインサイドセールスの位置づけ
インサイドセールスは、「マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセス」という4つの機能に分けた営業分業モデル(The Model型と呼ばれる分業体制)の中で、リード獲得と商談・受注をつなぐ橋渡し役を担います。この位置づけを理解しないまま責任範囲やKPIを決めようとすると、隣接部門との境界が定まらず、評価軸も筋が通らなくなります。
なぜ分業するのか。1人の営業担当が問い合わせ対応から商談・受注まですべてを抱える一気通貫型では、業務が集中して手が回らず、育成が必要な中長期リードが放置されるからです。分業すればプロセスをKPIで分解でき、どこで案件が詰まっているのかを特定しやすくなります。
ただし、分業には個別最適や部門間の情報分断という副作用も伴います。この副作用が、後述するKPI設計と連携設計の議論に直結します。
一気通貫型は、1人の営業担当がリードへの初回接触から提案・クロージング、受注後のフォローまでを担当する形です。担当者が顧客の状況をすべて把握しているため意思疎通のロスは少ない反面、業務量が個人の許容量を超えると、優先度の高い商談に時間を取られ、すぐに受注につながらない中長期のリードが後回しになりがちです。結果として、育成すれば案件化したはずの見込み客が失われます。
分業型は、この業務を機能ごとに切り分けて別の担当者・チームが受け持つ形です。各担当が特定の工程に集中できるため処理量が増え、育成が必要なリードにも継続的に接触できます。ただし、工程をまたぐたびに情報の受け渡しが発生するため、後述する連携ルールの整備が前提になります。
The Model型の分業では、営業プロセスを次の4つの機能に分けて役割を割り当てます。
- マーケティング Webサイト・広告・セミナーなどでリードを獲得し、育成して見込み度合いが一定に達したリード(MQL)をインサイドセールスへ供給する。
- インサイドセールス 非対面(電話・メール・オンライン会議)でリードに接触・育成し、商談化基準を満たした案件をフィールドセールスへ渡す。
- フィールドセールス 渡された案件に対して提案・見積・クロージングを行い、受注につなげる。
- カスタマーサクセス 受注後の顧客に対して活用支援・継続利用の促進を行い、LTV(顧客生涯価値)を最大化する。
インサイドセールスは、マーケティングから受け取った見込み客を、フィールドセールスが提案できる状態まで引き上げる中間の工程を担います。前後の機能と接する両側に受け渡し点があることが、この役割の特徴です。
分業する最大の理由は、営業プロセスをKPIで分解し、どこで詰まっているかを特定できるようにすることです。一気通貫型では「なぜ受注が伸びないのか」を担当者個人の力量に帰結させがちですが、分業すれば「リードは十分にあるのに商談化率が低い」「商談数はあるのに受注率が低い」といった具合に、詰まっている工程を切り分けられます。
もう一つの理由が、中長期リードの案件化です。今すぐには買わないが将来的に見込みがあるリードは、フィールドセールスが目先の商談を優先すると放置されます。インサイドセールスがこの層を継続的に育成することで、時間をかけて案件化させられます。
分業は万能ではありません。各部門が自部門のKPIだけを追うと、全体最適から外れた個別最適に陥ります。たとえばインサイドセールスがトスアップ数のみを追えば、質の低い案件まで渡してフィールドセールスの負担を増やします。
さらに深刻なのが情報の分断です。リード情報はマーケティング、育成履歴はインサイドセールス、商談の経緯はフィールドセールスと、部門ごとに情報が散在すると、顧客が同じ話を何度もさせられたり、追客が漏れたりします。この2つの副作用を抑える設計が、責任範囲の明文化とKPI・連携の仕組み化です。
インサイドセールスの責任範囲|どこからどこまでを担うのか
インサイドセールスの責任範囲は、「マーケティングが渡したリード(MQL)を受け取ってから、商談化基準を満たした案件をフィールドセールスへ渡すまで」です。この境界は、受け渡しの2点、すなわち入口(MQLの受領)と出口(トスアップ)を明文化して初めて定まります。逆に言えば、この2点が曖昧なままでは、責任範囲は永遠に決まりません。
境界が曖昧だと、典型的なトラブルが起きます。入口が定まっていないと、マーケティングが供給したリードを誰も追わない追客漏れや、フィールドセールスと重複して同じ顧客に連絡する二重対応が発生します。出口が定まっていないと、「まだ育成が足りない」「いや十分だ」という押し付け合いが起き、トスアップのたびに部門間で摩擦が生じます。以下では、入口と出口の判定基準の作り方まで踏み込みます。
責任範囲の入口は、マーケティングからどのリードを受け取るかを定義することで決まります。ここで基準になるのがMQL(Marketing Qualified Lead:マーケティングが一定の見込み度に達したと判断したリード)です。MQLの定義がないと、インサイドセールスは「資料請求はしたが検討度が低いリード」まで際限なく抱え込み、対応が追いつかなくなります。
MQLの判定は、属性(企業規模・業種・役職など自社の顧客像に合致するか)と行動(資料ダウンロード・セミナー参加・特定ページの閲覧など、関心の強さを示す行動)を組み合わせて設計します。重要なのは、この基準をマーケティングとインサイドセールスの双方で合意することです。片方が勝手に決めた基準は、供給される側とされる側の認識がずれ、機能しません。
責任範囲の出口は、育成したリードを商談としてフィールドセールスへ渡す(トスアップする)タイミングを定義することで決まります。ここで基準になるのがSQL(Sales Qualified Lead:営業が商談を進めるに値すると判断したリード)です。SQLの基準がないと、インサイドセールスの主観で「そろそろ渡せそうだ」とトスアップし、フィールドセールスが受け取ってから「まだ商談段階ではない」と差し戻すことになります。
出口の基準は、育成の結果として顧客側に検討の意思や具体的な課題・予算感が確認できたかどうかで設計します。次に具体的な判定項目を示します。
トスアップの質を担保するには、判定項目を具体的な言葉で定義します。営業の場面でよく使われるのがBANTと呼ばれる4項目です。
- Budget(予算) 導入・購入に充てられる予算の有無や規模を確認できているか。
- Authority(決裁権) 接触している相手が決裁に関与するか、キーパーソンにつながる道筋が見えているか。
- Needs(ニーズ) 解決したい課題が具体化しており、自社の商材で対応できるか。
- Timeframe(導入時期) 導入・検討の時期が見えているか。
すべての項目を満たさなければ渡せないと硬直的に運用すると、トスアップが滞ります。自社の商材特性に合わせ、たとえば「NeedsとTimeframeが確認でき、Authorityは接触経路が見えていればトスアップ可」といった具合に、必須項目と確認項目を切り分けて基準化するのが実務的です。基準はマーケティングのMQLと同様、フィールドセールスと合意して初めて機能します。
責任範囲を文書化せず「暗黙の了解」で運用すると、部門間で必ず摩擦が起きます。入口が曖昧だと、マーケティングが供給したリードのうち誰が対応すべきかが不明確になり、追客漏れが生まれます。出口が曖昧だと、トスアップのたびにインサイドセールスとフィールドセールスで「渡すべきか」の判断が食い違い、押し付け合いに発展します。
さらに、基準がないと評価もできません。「良いトスアップ」の定義がなければ、インサイドセールスの成果を測る指標も設計できず、結果として活動量(架電数など)だけで評価する事態に陥ります。責任範囲の明文化は、後述するKPI設計の前提でもあります。
インサイドセールスの責任範囲を、営業生産性の観点で位置づけておくと、役割の意義が明確になります。営業生産性は「(商談数×受注率×単価)÷工数」で表せます。インサイドセールスが主に効くのは、この式の「商談数」です。育成して質の高い商談を継続的に創出することで、フィールドセールスに供給する商談数を増やします。
ただし、責任範囲の設計を誤ると受注率にも波及します。質の低いトスアップを量産すると、商談数は増えてもフィールドセールスの受注率が下がり、生産性はかえって落ちます。だからこそ、責任範囲の出口(トスアップの質)が重要になるわけです。この因果は次章のKPI設計で詳しく扱います。
SDRとBDRで異なる責任範囲
同じインサイドセールスでも、反響対応型のSDRと新規開拓型のBDRでは、責任範囲もKPIも別物です。SDRは「マーケティングが供給するインバウンドリードの初動対応と育成」を担い、BDRは「こちらから狙う重点企業への能動的アプローチとキーパーソン接触」を担います。この違いを混同すると、評価軸がずれ、両者を同じKPIで測って一方が不当に低く評価される事態が起こります。
SDRとBDRの言葉の定義そのものは親ピラーで扱っているため、ここでは責任範囲とKPIの差分に絞って整理します。
SDR(Sales Development Representative)は、マーケティングが獲得・供給するインバウンドリードを起点に動きます。責任範囲の入口は、資料請求・問い合わせ・セミナー参加などで生まれたMQLの受領です。ここから初動対応(供給されたリードへの迅速な最初の接触)と育成を行い、商談化基準を満たした案件をトスアップします。
SDRの成果を左右するのは、リードが生まれてから接触するまでのスピードと、供給されたリードをどれだけ商談化できるかです。リードの供給量はマーケティングに依存するため、SDR単独で商談数を増やすには限界があり、マーケティングとの連携が前提になります。
BDR(Business Development Representative)は、自社が狙う重点企業のリストを起点に、こちらから能動的にアプローチします。責任範囲の入口は、マーケティングからのリード供給ではなく、自ら(あるいは会社が)定めたターゲット企業リストです。手紙・電話・メールなどでキーパーソンに接触し、関係をつくって商談化を目指します。
BDRは待ちの姿勢ではないため、リード供給に依存しない反面、成果が出るまでに時間がかかります。SDRと同じ短期的な商談化率で評価すると、正当に評価できません。BDRは接触した重点企業数やキーパーソンへの接触率など、開拓活動の中間指標を含めて評価する必要があります。
人員が限られる組織では、1人がSDRとBDRの両方を担うハイブリッド型を採ることがあります。このとき責任範囲を切り分けないと、対応が早く成果の見えやすいインバウンド対応にばかり時間が流れ、時間のかかる新規開拓が後回しになります。
混線を防ぐには、人・時間・リードのいずれかで境界を引きます。人で分けられる規模ならSDR担当とBDR担当を分ける、それが難しければ「午前はインバウンド対応、午後は開拓活動」と時間で区切る、あるいは「この重点企業リストはBDR活動として別管理する」とリードで分けるといった設計です。どの軸で切るにせよ、開拓活動の時間を意図的に確保しないと、緊急度の高いインバウンドに時間を奪われます。
インサイドセールスのKPI設計と評価の落とし穴
インサイドセールスのKPIは、活動量(架電数・メール数)、中間指標(商談化率・キーパーソン接触率)、成果指標(有効商談創出数・トスアップ後の受注率)の3層を組み合わせて設計します。最も重要なのは、活動量KPIだけに評価を偏らせないことです。
架電数だけで評価すると何が起きるか。メンバーは数字を作るために、検討度の低いリードにも手当たり次第に接触し、商談化基準を満たさないまま数を作りにいきます。結果として、数は多いが質の低いトスアップが量産され、フィールドセールスの受注率が下がります。商談数が増えても受注が伸びないという、生産性の観点で最悪の状態です。以下では3層のKPIと、トスアップの質を測る指標の設計まで踏み込みます。
インサイドセールスのKPIは、次の3層で捉えると設計しやすくなります。
- 活動量指標 架電数・メール送信数・接続率など、日々の行動量を測る指標。行動管理と初動改善に使う。
- 中間指標 商談化率(接触したリードのうち商談に至った割合)・キーパーソン接触率・有効会話数など、活動が成果に近づいているかを測る指標。
- 成果指標 有効商談創出数(フィールドセールスが有効と認めた商談の数)・トスアップ後の受注率など、最終的な貢献を測る指標。
3層のうち、評価の主軸に据えるべきは成果指標と中間指標です。活動量は成果の先行指標として行動管理に使い、評価そのものの中心には置きません。
活動量を評価の中心にすると、メンバーの行動が「量を作ること」に最適化されます。検討度の低いリードにも均等に架電し、商談化基準を満たさない案件でもトスアップ数を稼ぎにいく。この行動は、活動量KPIの上では優秀に見えます。
しかし、その先でフィールドセールスが受け取るのは、育成が不十分な案件です。フィールドセールスは商談化しない案件に時間を取られ、受注率が下がります。インサイドセールスの数字は良いのに全体の受注が伸びないという、分業の副作用である個別最適の典型例です。活動量KPIは行動管理には有用ですが、評価軸にすると組織を壊します。
活動量への偏りを防ぐ鍵は、トスアップの質を指標化し、インサイドセールスの評価に接続することです。具体的には、トスアップした案件のうち、フィールドセールスが有効と認めた割合(有効商談化率)や、トスアップ後の受注率をインサイドセールスの成果指標に組み込みます。
こうすると、インサイドセールスは「多く渡す」だけでなく「受注につながる案件を渡す」ことに動機づけられます。質の低いトスアップは有効商談化率や受注率を下げるため、数を稼ぐだけでは評価されなくなります。この指標を成立させるには、トスアップした案件がその後どうなったかを部門をまたいで追跡できる状態が前提になります。ここでも情報の一元化が効いてきます。
インサイドセールス単独のKPIだけを追うと、前章で触れた個別最適に陥ります。これを防ぐには、部門をまたいだ共通目標を設けます。たとえば「トスアップ後の受注率」はインサイドセールスとフィールドセールスの双方が関わる指標であり、これを共通目標にすると、両部門がトスアップ基準の擦り合わせに協力する動機が生まれます。
共通目標は、単独のKPIでは見えない部門間の摩擦を表面化させます。「トスアップの質が低い」のか「フィールドセールスのクロージングが弱い」のか、共通の指標を見ながら議論できるため、責任の押し付け合いではなく改善の会話に変えられます。
マーケティング・フィールドセールスとの連携設計
分業の成果は、役割分担の明文化と情報共有の仕組み化という両輪で決まります。どちらか片方だけでは連携が形骸化します。役割だけ決めても情報が共有されなければ機能しませんし、情報共有の仕組みがあっても役割の共通認識がなければ責任の境界が揺れます。
連携が失敗する典型は2つです。1つは役割・目標の共通認識がないこと、もう1つは情報共有がルール化されず属人化することです。以下では、マーケティングとの連携、フィールドセールスとの連携、そして情報分断を防ぐ仕組みの3点を実務的に整理します。
1つ目のパターンは、役割と目標の共通認識が欠けているケースです。MQLやSQLの定義を各部門が別々に解釈していると、供給する側と受け取る側で「良いリード」「良い商談」の基準がずれ、受け渡しのたびに摩擦が生じます。目標が部門ごとに閉じていると、前章で述べた個別最適も進みます。
2つ目は、情報共有が形骸化するケースです。受け渡しのルールが決まっていなかったり、情報が担当者の頭の中や個人のメモ・表計算ソフトに散在したりすると、共有は担当者の善意に依存し、属人化します。担当者が不在なら情報が止まり、異動や退職でノウハウごと失われます。
マーケティングとの連携の要は、責任範囲の入口であるMQLの定義を双方で合意することです。マーケティングが「MQL」と判断して供給したリードが、インサイドセールスから見て商談につながらないなら、定義がずれています。属性と行動の基準を突き合わせ、商談化につながるMQLの条件を一致させます。
合意して終わりではなく、フィードバックループを回すことが重要です。供給されたリードのうちどれだけが商談化したかをマーケティングに戻し、商談化しやすいリードの傾向を共有します。マーケティングはその情報をもとに獲得施策やスコアリングを調整でき、MQLの質が継続的に上がります。この往復がないと、供給量は増えても質が伴わないリードが積み上がります。
フィールドセールスとの連携の要は、責任範囲の出口であるトスアップ基準を双方で合意することです。前述のBANTなどの判定項目を、フィールドセールスが「この状態なら商談を進められる」と納得する形で定義します。基準がインサイドセールスの一存で決まっていると、フィールドセールスは受け取った案件に不満を持ち、トスアップが機能しなくなります。
あわせて必要なのが、差し戻しのルールです。基準を満たさない案件が渡された場合に、フィールドセールスがどのような手順でインサイドセールスへ戻し、再育成に回すかを決めておきます。差し戻しを「押し付け合い」ではなく「基準に基づく正当な手続き」として運用できれば、感情的な摩擦を減らせます。
分業体制では、リード情報・育成履歴・商談の経緯が部門ごとに分断されやすくなります。これを埋めるのが、SFA/CRM(営業支援システムであり、顧客情報や案件情報を一元管理し、営業プロセスを標準化する考え方とツール)の一般的な役割です。情報の分断を防ぐには、データを1か所に集める一元化と、誰がやっても一定の質で回るプロセスの標準化を両輪で進める必要があります。データを集めるだけでは、活動の質はそろいません。
よく使われる仕組みとして、たとえばMazrica SalesのようなSFA/CRMでは、案件をフェーズごとにカンバン表示する案件ボードで、案件カードを直近のアクション状況に応じて色分け(青=1週間以内にアクション/黄=1か月以内/赤=1か月以上アクションなし)できます。これにより、分業体制でも追客漏れが視覚的に把握でき、赤の案件から優先して対応する判断がしやすくなります。案件発生日からのリードタイムやフェーズ滞留日数も指標として追えるため、どのフェーズで案件が滞っているかを部門をまたいで確認できます。同種の機能は他のSFA/CRMにも備わっていることが多いため、自社の運用に合うものを選ぶとよいでしょう。
連携の具体的な手順やトスアップ後の伴走までを詳しく知りたい場合は、インサイドセールスとフィールドセールスの連携を参照してください。
インサイドセールスの役割定義が機能する組織条件
役割を切り分ける分業体制は、すべての組織に必要なわけではありません。効果が出るのは、「高単価・長期検討の商材を扱っている」「リード供給はあるが追い切れていない」「マーケティングから営業への連携で商談数を増やしたい」という条件に当てはまる組織です。この条件を外れた組織が分業だけ先に導入すると、役割は決めたのに回らないという状態になります。
逆に、リード供給が乏しい段階では、責任範囲を切り分ける前にリード獲得の仕組みを整えるほうが先です。以下では、優先すべきケースと、先にやるべきことがあるケース、そして少人数での始め方を判定軸で示します。
次の3条件に当てはまるほど、インサイドセールスの分業体制が効きます。
- 高単価・長期検討の商材である 検討期間が長く、育成に手間がかかる商材ほど、育成に専念する役割の価値が高い。すぐ売れる低単価商材では分業のコストが見合わないことがある。
- リード供給はあるが追い切れていない マーケティングや問い合わせでリードは来ているのに、フィールドセールスが目先の商談を優先して追客できていない状態。この放置されたリードを育成する役割として効く。
- マーケティングから営業への連携で商談数を増やしたい 営業生産性の「商談数」を伸ばすことがボトルネックになっている組織。
これらは営業生産性の式のどこに詰まりがあるかで判断できます。商談数が不足しており、その原因がリードの追い切れなさにあるなら、分業の効果が出やすい状態です。
そもそもインサイドセールスが対応すべきリードが不足している場合、責任範囲を切り分けても仕事がありません。この段階で分業を先行させると、インサイドセールスの担当者が対応するリードがなく、活動量KPIを埋めるためだけの架電に追われます。
こうした組織はまず、マーケティングや問い合わせ経路の整備でリード供給量を確保するのが先です。リードが安定して供給されるようになってから、その受け皿としてインサイドセールスの責任範囲を設計するほうが、無理がありません。ただし、BDRのように自ら開拓する役割は、リード供給が乏しくても成立します。開拓が主眼なら、リード供給を待たずにBDRから立ち上げる選択肢があります。
人員に余裕がなく、専任のインサイドセールスを置けない組織もあります。その場合、1人がSDRとBDRの両方、あるいはインサイドセールスとフィールドセールスの一部を兼ねるハイブリッド型から始める判断があります。
始める前に確認すべきは、営業生産性のどこに詰まりがあるかです。商談数が足りず、その原因がリードの追い切れなさにあるなら、1人でも育成に時間を割く価値があります。前述のとおり、この場合は人・時間・リードのいずれかで役割の境界を引き、育成や開拓の時間を意図的に確保します。まず1人で運用しながらトスアップの質を検証し、効果が見えてから増員するほうが、いきなり体制を組むより失敗が少なくなります。
まとめ
インサイドセールスの役割の肝は、責任範囲(入口=MQL受領/出口=トスアップ)とKPI(活動量に偏らせない)を明文化することにあります。境界とトスアップ基準を曖昧にしたまま人だけ配置しても、部門間の摩擦と個別最適で分業は形骸化します。
自組織への当てはめは、条件で判断できます。リードは来ているが追い切れていない高単価・長期検討の組織なら、SDR起点で立ち上げるのが妥当です。開拓が主眼で重点企業リストが明確なら、リード供給を待たずBDRから始めます。リード供給そのものが乏しければ、責任範囲を切る前にリード獲得の仕組みを整えるのが先です。
現実的な第一歩は、いきなりKPIツリー全体を再設計することではありません。「MQLの定義」と「トスアップ基準」の2つを、マーケティング・フィールドセールスと一枚の紙に書き出して合意することから始めてください。この2点の共通認識ができれば、責任範囲もKPIも自然と定まっていきます。
体系的な全体像を確認したい場合は、インサイドセールスとはをあわせて参照してください。
よくある質問
Q インサイドセールスとフィールドセールスの責任範囲はどう分ければいいですか?
境界を決める順序が重要です。まず出口(トスアップ)から決めます。フィールドセールスが「この状態なら商談を進められる」と納得するSQLの条件を先に合意し、そこから逆算してインサイドセールスが担う育成のゴールを定めます。出口を先に固めると、入口(どのリードから育成を始めるか)も自然に決まります。入口から順に決めようとすると、ゴールが定まらないまま育成範囲が際限なく広がりがちです。
Q インサイドセールスのKPIに架電数を入れてはいけないのですか?
入れて構いません。ただし評価の主軸には置かず、行動管理の指標として使います。架電数は成果の先行指標であり、活動量が足りているかを日々確認するには有用です。問題になるのは、架電数を評価の中心に据えて、質を問わず量だけを追わせる運用です。評価は有効商談創出数やトスアップ後の受注率といった成果指標を主軸にし、架電数は行動の改善に使う位置づけにします。
Q SDRとBDRはどちらから立ち上げるべきですか?
リードがインバウンド中心か開拓中心かで判断します。問い合わせや資料請求でリードが供給されているなら、その受け皿となるSDRから立ち上げるのが自然です。一方、狙う重点企業が明確で、こちらから開拓する必要があるならBDRから始めます。リード供給が乏しくインバウンドが期待できない段階では、供給を待たずに開拓できるBDRのほうが成立しやすいケースもあります。
Q インサイドセールスとマーケティングの役割はどこで線を引きますか?
線を引く点は、MQLの受け渡しです。マーケティングがリードを獲得・育成し、一定の見込み度に達したと判断したリード(MQL)をインサイドセールスへ渡す、ここが責任範囲の入口になります。ただし、渡して終わりではなく、供給されたリードがどれだけ商談化したかをマーケティングへ戻すフィードバックループが必要です。この往復がないと、供給量は増えてもインサイドセールスが商談化に苦しむリードばかりが積み上がります。
Q 少人数でもインサイドセールスを導入する意味はありますか?
あります。ただし、まず営業生産性のどこに詰まりがあるかを確認してください。商談数が足りず、その原因が「リードは来ているが追い切れていない」ことにあるなら、1人でも育成に時間を割く意味があります。この場合、SDRとBDR、あるいはインサイドセールスとフィールドセールスを兼ねるハイブリッド型の1人運用から始め、トスアップの質を検証しながら増員を判断するのが現実的です。逆に、そもそもリードが不足しているなら、先にリード獲得の仕組みを整えるほうが優先されます。
Q インサイドセールスとカスタマーサクセスは何が違いますか?
対象とする顧客のフェーズが異なります。インサイドセールスは受注前の見込み客を育成し、商談を創出する役割です。カスタマーサクセスは受注後の顧客に対して活用支援や継続利用の促進を行い、LTV(顧客生涯価値)を最大化する役割です。The Model型の分業では、インサイドセールスが営業プロセスの前段、カスタマーサクセスが受注後の後段を担い、どちらも顧客との関係を築く点は共通しますが、成果として見る指標(商談創出か継続・拡大か)がまったく異なります。







