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マネージャーやリーダーのみなさんは、部下を指導をするに当たって、さまざまな難しさを感じることがあると思います。

その中でも、特に判断に困るのが叱咤激励などの指導がパワハラ(パワーハラスメント)にならないかどうかではないでしょうか。

自分ではパワハラだと思っていなくても、ハラスメントの本質は「相手がどう思うか」という点にあります。相手がパワハラだと感じたのならば、社内での評価の低下・降格処分や最悪の場合裁判沙汰になってしまってもおかしくありません。 今回の記事ではパワハラと指導の違いについて解説を行い、裁判事例などを用いてその基準についてはっきりさせていきます。 自分の言動がパワハラに当たらないか注意する一助にしてみてください。

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パワハラと指導の違いとは

どこまでが「指導」で、どのような行動や発言が「パワハラ」になってしまうのでしょうか?

まずは、それぞれの違いを見ていきましょう。

①パワハラとは

パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」です。自分の権力を用いたハラスメントなので、パワーハラスメントと呼ばれるのです。

関連記事:部下とのコミュニケーション7つのコツ|成長を加速させる指導術

では、この中の『業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為』とは、具体的にどんな行為を指すのでしょうか?

厚生労働省では、以下の6つのタイプに分類しています。

パワハラと指導の違いとは?パワハラにならない指導方法と裁判事例 | Mazrica (旧 Senses) Lab. | 4 「昔はこんな言動はパワハラに当たらなかった」と思う方もいるかもしれませんが、今の時代と昔の時代は違います。また、部下がストレスを抱えずに業務を行えるようになれば業務内容の改善にも繋がります。

関連記事;ストレスコーピングとは?種類と職場での具体的な実践法を紹介!

②指導とは

指導という言葉の意味は「教え導くこと」です。

厳しく叱ったり、声を荒げることはあっても、そこには常に「よくなって欲しい」「成長して欲しい」という思いが根底に流れているということですね。

職場における指導であれば、
・部下に対し、自らの欠点を自覚させ、併せて長所を気づかせる
・事後的なフォローをすることにより、叱責前の状況よりも引き上げるための努力をする
・叱責や指導の必要性を明確にし、部下に伝える
・・・といった点が、ポイントになります。

関連記事:マネジメントとは?意味や業務に必要な4つのスキル・事例まで解説

③パワハラと指導の違い

「パワハラ」と「指導」では、目的や業務上の必要性、態度などに明確な違いがでます。

人事院がつくった「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」に掲載されているものがわかりやすく、参考になります。

パワハラと指導の違いとは?パワハラにならない指導方法と裁判事例 | Mazrica (旧 Senses) Lab. | 5

ここで一つ注意が必要なのは、相手や状況によってパワハラと感じるかどうかは違うということです。

例えば部下が、危険な工事現場でスマホを見ながら歩いていたとします。

頭上では鉄骨がクレーンで持ち上げられようとしている・・・そんな状況を見た上司はたまらず「バカヤロウ!死にたいのか!」と叫びます。

「バカヤロウ!」という言葉だけを取り上げれば、パワハラ(精神的攻撃)です。

しかし状況を見れば、部下の生命を守りたいという一心で言ったことであり、パワハラでないことは一目瞭然です。

一方で、初めてやらせる仕事が上手くできなかったことに対して、「おまえは本当にバカだな」と言った場合、これはパワハラに当たる可能性が高いです。

要は、部下への愛情なのか嘲笑するためなのかという目的の違いが、指導とパワハラを区別する、一つの基準になるということです。

関連記事:モラハラとは?職場における裁判例と対処法

パワハラの裁判事例

最後に、パワハラと認定された裁判事例と、パワハラと認められなかった裁判事例をご紹介いたします。

①パワハラと認定された裁判事例

■事件の概要

2日間の日程で行われた研修後、社長や役員も含め参加者全員が出席する懇親会が開かれました。

その席上でT本部長が、Xのことを「頭はいいのだができが悪い」、「何をやらしてもアカン」、「その証拠として奥さんから内緒で電話があり『主人の相談に乗って欲しい。』と言われた」などと発言。

Xは懇親会終了後の午後9時45分ころ、妻に電話をかけて、「また死にたくなったわ」と述べて電話を切り、翌日早朝、宿泊先ホテルの窓から飛び降り自殺してしまいました。

■判決

・T本部長の発言は、職場において日常的に見受けられる職場のストレスと一線を画するものであり、言われた者にとっては、にわかに忘れることが困難な、かつ明らかなストレス要因となる発言である

・このストレスが精神障害の増悪の原因となり、その程度も大きいものであったと認められることからすると、T本部長の発言を業務起因性の判断の際の要素として考慮すべきである

■パワハラと認定されたポイント

研修参加者全員が出席する懇親会の席上行われたものであり、業務上のものであると解される

酔余の激励とはいえ、「妻が内緒で電話をしてきた」などと通常、公表されることを望まないようなプライベートな事情を社長以下、役員や多数のSC長の面前で、暴露するものである

②パワハラと認められなかった裁判事例

■事件の概要

被告法人が、利用者数が伸び悩むデイサービスの利用者獲得のため、原告を始めとする職員に対し、以下の指示を複数回に渡り行いました。
・近隣の住民宅へチラシを配布
・利用者数増加のための対策を立てるよう求める

加えて被告法人では、行政に対する不正を含む以下の行為を行っていました。
・業務上必要な物品購入の許可を与えない
・看護師募集をチラシに掲載することを拒絶
・助成金の返還額を減らすため、受給要件を満たしているかのように書類を改ざん

そこで、上司である被告法人の常務理事(「被告理事」)からパワーハラスメントを受けて適応障害に陥ったとして、原告が慰謝料を請求した事案です。

■判決

被告理事が職務上の立場を利用して日常的に原告に対し威圧的な言辞を用いたり、業務上の適正な範囲を超える業務を強要したとまで評価し得るような、具体的事実を認めるに足る証拠はない。

■パワハラと認められなかったポイント

・被告理事が原告にパワハラ行為を行う特段の動機は見当たらず、被告理事の指示や叱責などはそれが行き過ぎる場合があったとしても、主として発足したばかりのデイサービスの経営を軌道に乗せ、安定的な経営体制を構築しようという意図に出たものと推認され、それを超えて原告に対する私怨などに出たものとは認めるに足る証拠はない

・被告理事が原告に指示などした内容は、被告の常務という職務に照らして不当であるとは言えない

パワハラにならない指導方法

それでは、パワハラと受け取られないようにするには、どんな指導をするべきなのでしょうか?

指導することに対しビクビクしていては適切な指導ができず、部下の成長にも繋がりません。

ここでは、具体的にどんな指導法をすればパワハラにならず、部下の成長に寄与できるのかについて、紹介していきたいと思います。

関連記事:やる気のない社員が生まれる原因とは?対処法も解説!

①叱る目的を考え直す

指導の中でも、パワハラと受け取りかねないのが「叱る」という行為です。

そこで今一度、叱る目的を考え直してみましょう。

部下を叱るのはどんなときでしょうか?

適切に業務ができていなかったり、ミスを繰り返していたりなど、良くない行動をやめさせたり改善したりすることが目的のはずです。

ここで部下の人格を否定して貶めたり、暴力を振るったりしても、何も変わりません。

それどころか、そうしたやり方に反発したり、あなたや仕事をすること自体を極度に恐れるようになってしまうだけです。

叱るのは「部下を良い方向に変えること」だという目的を忘れなければ、パワハラをしてしまうようなことはないはずです。

②適切でない指導とは?

パワハラとは言えないまでも、部下の成長に繋がらない指導をしているようでは、上司失格です。

・感情的な指導 ・抽象的な指導 ・部下への伝わり方に無頓着な指導 ・相手や状況を顧みない画一的な指導

このような指導方法では部下に伝わりにくく、単に反発や反感を買ったり、自信喪失や落ち込み、さらには心の健康を害することに繋がる可能性もあります。

関連記事:信頼される上司になる3つのポイント|部下が冷たいのはどうして?

③適切な指導とは?

上述したものと逆のことが、適切な指導になります。

・感情ではなく、指導であるとの目的意識をしっかりと持つ
・具体的な行動や内容に焦点を当てる
・部下への伝わり方を確認する
・相手や状況に応じて、ケース・バイ・ケースで指導をする

関連記事:目標管理の4つのコツ|部下のモチベーションを最大限引き出す

④指導をする際の注意点

■感情に左右されない

感情に左右されずに指導をすることで、冷静に指導をし、かつ評価をすることが可能になります。

アンガーマネジメント(怒りのコントロール)を身につけるとともに、怒りにまかせて怒ってしまいそうになった時には、以下のことを試してみてください。
怒りがゼロにはならなくても、大幅に減らすことができます。

・10数える
・深呼吸する
・上から眺める(客観的に自分を見る)

■相手の理解力に合わせる

部下の理解力、意識、職業上の知識や能力に合わせて指導を行うようにしましょう。

意識の低い部下に対して自発的な行動を求めるのは難しいですし、知識がなければ話そのものが伝わりません。

こういった場合には、まずは仕事への意識を高めたり、噛み砕いて易しく説明する必要があります。

■具体的な行動や内容に焦点を当てる

抽象的だったり、遠回しに伝えるのでは、部下の行動は変わりません。

例えば、遅刻を繰り返す部下に対し「バカ」と罵ったり、「遅刻だよ!」と言っても、具体的に何をしたらいいのか部下はわからないですよね?

▼「遅刻をすることで、問い合わせをしてきた顧客に迷惑がかかる」など遅刻をすることの問題点を伝え、
▼「売上がトップであることよりも、ルールを守れることが大事だ」といった評価のポイントを伝え、
▼さらに「遅刻が続くようであれば、減給処分とする」というように今後の処置まで説明してはじめて、部下は何をすべきかが理解できるのです。

関連記事:営業の部下育成術|たった二つのアプローチ方法で確実に伸ばす

■指導した内容がどのように伝わったのかを確認する

前述したように、指導の目的は部下の行動を変えること。

ですので、指導した後は、それが正しく伝わっているのかを必ず確認するようにしましょう。

これができていないのであれば、「指導をした」というあなたの単なる自己満足で終わってしまいます。

<正しく伝わったかを確認する方法>
・復唱させる
・指導した作業を実施させる
・一定期間を過ぎた後、テストをする

関連記事:効果的な部下の褒め方とは?成長を加速させる褒め方やタイミング解説

さいごに

パワハラと認定された裁判事例でご紹介したように、発言や行動が、自分の意図とは違って受け取られてしまうことも、往々にしてあります。

「これを言ったらパワハラになるだろうか・・・」と考えだしたらキリがないとはいえ、やはり、指導は仕事の具体的な行動に限ってするべきであり、個人の人格やキャリア、経験を否定するような発言や行動はアウトです。

部下を叱咤激励するためだった、仲良くなりたいがためにからかってしまったなど、上司であるあなたにも言い分はあると思いますが、部下は必ずしもそう受け取らないことを肝に銘じて、行動、発言をするようにしてください。

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