「同じ時間をかけても、営業同行の効果にバラつきが出る」 「属人的な指導ではなく、再現性のある営業同行の仕組みを構築したい」
このようにお悩みのマネージャーやOJT担当者は多いのではないでしょうか? 営業同行は、新人営業の早期戦力化と営業スキルの標準化に不可欠な教育プロセスです。
本記事では、新人営業の成長フェーズ別(入社直後〜独り立ち後)の同行目的と具体的な指導方法、そしてマネージャーが意識すべきフィードバックのコツまでを網羅的に解説します。
属人的な指導から脱却し、営業同行の効果を最大限に高めたい方は、ぜひご一読ください。
この記事の内容
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営業同行の目的と、効果を最大化するためのマナー・事前準備
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成長フェーズ別(新人〜独り立ち後)に最適な同行のタイミングと指導方法
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先輩・マネージャーが意識すべきフィードバックの具体的なコツ
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SFAを活用した同行記録と、指導の再現性を高める方法
営業同行の目的とは?
毎年、新入社員が新しく営業部門に配属されて営業研修が行われていると思います。研修後にいきなり一人で実践に入るケースは少なく、多くの企業ではまず営業同行が行われているのではないでしょうか。
先輩営業のみなさんは、会社から指示されたから営業同行を受け入れている、という方も多いかもしれませんが、本来の営業同行の目的を知ることで新人営業の早期戦力化が期待でき、マネジメントという観点から自身の成長へと繋がります。
新人営業は同行することで「営業がどんな仕事をしていて、何が重要なのか」を実際に体験します。営業研修である程度のセールストーク術やビジネスマナーなどを教わるかもしれませんが、実際の営業の現場に立つと研修の時のように上手くいきません。顧客それぞれに特徴があり、興味関心も違うため、研修の時のような限られたケースだけでは通用しなくなるためです。
雑談も含めて上司と顧客がどのように会話をしていてどのように対応しているのか、しっかりと学ぶことが大切です。この際にビジネス用語と一般的な単語、言葉遣いなども押さえるようにします。商品の知識以上に営業にとって大切なことは顧客とのコミュニケーションスキルです。
営業同行時に心掛けるポイント

営業同行を実施している企業の多くは新人営業に対して平等に同行の機会を与えていると思います。しかし、十分に準備の出来ていない状態で営業同行をしても十分な効果は発揮されません。
一定レベルに達した新人営業を同行させるのが理想的です。
では、どの程度のレベルであれば営業同行させて良いのでしょうか。
3つの観点から新人営業のレベルを確認してみてください。
1.ビジネススキル(議事録、メモ、挨拶、5分前行動、商品知識)
ビジネスにおいて最低限のマナーや行動ができているかどうかを確認します。遅刻はしないか、挨拶はできているかなど最低限のビジネスマナーから、必要の最低限の商品知識を備えているかや議事録の作成が可能かどうかなどを確認します。
2.自主性(質問をする、準備、できる事を自ら探す)
営業同行は“同行“だから先輩営業の後ろをただ単についていけば良い、と考える新人営業がいるかもしれません。このような自主性の無い考え方では営業同行をしてもスキルは身に付きません。自主的に顧客へ質問したり、商談の準備をしたり、出来る事を主体的に探しているか確認します。
3.現場対応力(マニュアル人間ではない)
どんなに研修で学んだとしても営業の現場では予測していない様々な事が起こります。起こり得るトラブルを全てシュミレーションしておくことは不可能ですが、過去の事例などを元にした営業ロープレである程度の想定をすることは可能です。臨機応変に対応できる現場対応力がある程度必要です。
営業同行で最低限知っておきたいマナー
営業同行させてもらう上司に対して最低限のマナーは知っておきたいです。
もしマナーがなっていないと、営業同行している新人営業本人とその上司の関係性が良いものにはなりません。
例えば、営業で上司に同行するときは「上司が先で自分があと」と覚えておきましょう。
商談の際に会議室に入る際、出る際、名刺を交換するときや顧客に挨拶するときも基本的には上司より先に自分が前に出てはいけません。
時には商談が長引き、仕事とは関係ない雑談を上司と顧客がしているかもしれませんが、自分は関係ないから先に帰りたいという雰囲気を出さずに雑談もコミュニケーションのひとつと受け入れて、臨機応変に対応することが必要です。
営業同行の効果を最大化させるコツ
営業同行は新人営業にとって実践の場であり、学ぶことが多くある大変貴重な場です。
しかし、この営業同行を十分発揮しきれない営業もいるようです。どうすれば営業同行の効果を最大化できるのでしょうか。
1.営業同行の目的を明確にする
冒頭で説明したように営業同行は先輩営業の後ろをただついていけば良いというものではありません。先輩営業に同行することで商談の進め方や顧客のコミュニケーションの取り方、プレゼンテーションなどスキルを現場から実体験して学ぶことです。
更に新人営業が担当している案件で先輩営業が同行していればその場で的確なフォローもしてくれるはずです。例え失敗したとしても大きなトラブルになることは少ないでしょう。このような営業同行の目的をはっきりと共有し、成長の場ということを本人に強く意識付けることが重要です。
2.適切なフィードバックをする
営業同行を行うメリットはその場に上司と新人営業が一緒にいることです。上司は部下の営業を確認できているので、フィードバックを出来るだけ早く返してあげます。商談の内容やプレゼンの方法がどうだったのかをフィードバックすると共に、自分の反省点は何だったか、今後どうすれば改善すると思うか、など自発的に考えられる質問も効果的です。
営業同行を効果あるものにするには新人営業自身に責任感をもった仕事をしてもらい、自立させることが重要です。教えるだけではなく、自分自身で考える機会を与えられれば効果的な営業同行へと繋がるでしょう。
営業同行前の準備
自社サービスの十分な理解
商談同行する前に準備をしておくと効果的です。その一つが自社サービスの理解です。
- 顧客に対してどのような価値を提供できるのか
- 訪問する顧客に近いサービス導入事例はないか
- 競合優位性はどこか
など自社サービスを理解した上で商談に同席すると自分ごとに考えられ、学ぶことも増えるでしょう。
商談の見込客の理解
商談相手の企業情報や課題を調べておきましょう。SFA/CRMを導入している場合は過去のやり取りをしっかり読み込みましょう。
仮説立案
上記の準備ができたら自分だったらその商談をどうのように進めるのはシミュレーションしてみましょう。立てた仮説と先輩社員の実際の商談の進め方を照らし合わせることで、商談後の先輩への質問も自然とできるようになるでしょう。
営業同行の主なタイミング(成長フェーズ別)
① 入社直後(0〜1ヶ月目)
目的:営業の基礎を学ぶ・現場感をつかむ
- 入社後すぐの時期 は、営業の基礎知識や商談の流れを学ぶために、積極的に同行を実施
- まずは先輩や上司の営業を**「見学」しながら、リアルな商談の雰囲気を体感することが重要**
- この段階では「話すこと」よりも「聞くこと」を重視 し、トークの流れや顧客対応を学ぶ
✔ 効果的な実施方法
訪問前に「商談の目的」と「ポイント」を説明する(何を意識すればよいか明確にする)
訪問後にフィードバックタイムを設け、疑問点を解消する
最初の1ヶ月は「同行回数」を重視し、多様な商談を経験させる
例:SaaS企業A社のケース
新人営業が最初の2週間で10件以上の商談に同行 し、
その後のロールプレイ研修で実際の商談に近い環境での練習を実施。
結果として、商談デビュー時の成功率が20%向上!
② ひとり立ち前の準備期間(1〜3ヶ月目)
目的:営業スキルの定着・自分で話す練習
- 一定の基礎知識を身につけたら、同行商談の中で「一部のパート」を担当させる
- 例えば、自己紹介・ヒアリング・簡単な提案部分などを新人が担当 し、徐々に商談をリードできるようにする
- 商談後にフィードバックを受け、次の商談に活かす
✔ 効果的な実施方法
商談の事前準備を自分でやらせる(アジェンダ作成・想定質問など)
商談後に同行者が「良かった点」と「改善点」を具体的に伝える
少しずつ発話量を増やし、「主担当」になれるように指導する
例:人材系B社のケース
新人営業が2ヶ月目以降は、1回の商談で30%以上のパートを担当 するルールを設定。
これにより、3ヶ月目には約80%の新人がひとり立ち可能に!
③ ひとり立ち直後(3〜6ヶ月目)
目的:商談の質を向上・自己改善の習慣化
- ひとり立ち後も、定期的に上司・先輩が同行し、商談の質を高める
- 「自己流」のクセがつかないように、定期的にフィードバックを受ける機会を確保
- 特に受注率が低い場合や、特定の課題がある場合は同行を増やす
✔ 効果的な実施方法
新人自身に「商談の自己分析」をさせる(録音・動画を活用)
同行者は「より高いレベルのアドバイス」を提供し、成約率向上を目指す
同行後、1週間以内に「改善アクション」を設定し、実践させる
例:IT企業C社のケース
ひとり立ち後3ヶ月間は、上司による定期同行を月2回実施。
商談後に動画を振り返り、プレゼンの修正ポイントを明確化。
結果、営業成約率が35%向上!
④重要商談・高額案件の対応(随時)
目的:受注率の最大化・重要商談の成功率アップ
- 新人でも大きな案件を担当する場合、上司や役員が同行し、商談を成功に導く
- 高単価・重要顧客へのアプローチには、ベテランのフォローが必要
- 最終決裁者との交渉が必要な場合、上司が同行すると受注確率が上がる
✔ 効果的な実施方法
重要な商談前にはロープレを行う
上司は「決裁権のある相手」と交渉しやすい立ち位置を取る
商談後に「なぜこの商談が成功したのか」を分析し、次につなげる
例:広告代理店D社のケース
新人営業が1,000万円以上の案件を担当する場合、必ず上司が同行。
結果、競合がいる中でも勝率が50%以上に向上!
適切なタイミングで営業同行を実施し、新人営業の成長を最大化しましょう。
営業同行される先輩営業が気を付けるポイント

営業同行は同行する新人営業だけではなく、先輩営業にも高い目標意識がなければ十分な効果がないまま終わってしまいます。では、先輩営業はどの点に気を付ければ良いのでしょうか。
営業マネージャーが同行で注意すべき点
営業同行すればどんな新人でも同じように成長するかと言えば決してそんなことはありません。成長の早い新人、成長の遅い新人、特定の分野には強い知識のある新人などそれぞれです。つまり、先輩営業としてその新人営業の「個」を見極め、得意な部分は伸ばしつつ、足りないスキルはフォローしてあげる、という素早い判断が必要となります。
新人が伸びる営業同行は、共通して先輩営業が良い見本を見せていることにあります。普段の営業をするのではなく、営業のプロセスを分解して細かく新人営業に伝えるように営業同行を実施します。営業能力が高い先輩営業に同行すると「こんなに簡単に営業は出来るのか」と勘違いしてしまいます。背景も含めて説明することで一つ一つの行動の意図や営業プロセスを伝えることができます。
関連記事:営業マネージャーの仕事と役割とは?事例でわかりやすく説明
営業同行でメンバーの営業力を強化させるコツ
では、どのように見せるのが良き手本になるのでしょうか。
自転車に初めて乗る子どもに対して「お父さんのように乗ってごらん」と見せるだけではコツは伝わりません。子どもの個性により、すぐ乗れるようになるかもしれませんし、全く乗れないままかもしれません。
上手な伝え方は「見て学べ」だけではなく、「初めは地面を蹴って助走をつけてからペダルをこぐ」「足元ではなく前を見る」など具体的な工程を説明しながら見せる工夫が効果的とされています。
営業同行においてもこの考え方は共通しています。営業の経験が長いと、流れるように営業が行えるかもしれませんが、あるプロセスで止めて「このポイントは○○が大事」「ここでは○○に注意して」などポイントの説明と同時に説明をしてあげるとコツをつかみやすくなります。また、自分自身で考える機会も重要です。
「さっきの商談を見ていてポイントは何だったと思う?」など問いかけをしてみて、新人営業を巻き込みながら営業同行を進めるようにしましょう。
営業同行の効果を最大化する「記録とデータ活用」のポイント
営業同行の効果を最大限に引き出し、指導の再現性を高めるためには、個人の記憶に頼らず、記録とデータ活用を仕組み化することが重要です。
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同行後のフィードバックをSFAに残す 商談の感想やフィードバックは、口頭だけでなくSFA/CRMのタイムラインや活動履歴に必ず記録しましょう。「誰が」「いつ」「何を教えたか」が履歴として残るため、次の先輩が指導する際の参考になり、指導内容のブレを防げます。
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「成功の要因」をナレッジとして蓄積 新人営業が受注できた際は、「たまたま」で終わらせず、その商談の成功要因、顧客の課題、提案内容などを詳細にSFAに残します。これらの成功パターンは、他の新人や営業メンバー全員のナレッジとして活用できる組織の資産となります。
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商談前の「SFAでの仮説立て」を義務化 新人営業が同行前に、先輩やマネージャーに対し「SFAに記録されている過去の履歴から、顧客はどのような課題を抱えていると仮説を立てたか」を説明する時間を設けます。これにより、先輩の背中をただ追うだけの受動的な同行から、能動的に学ぶ同行へと質を高めることができます。
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指導のムラをSFAで解消 マネージャーは、各メンバーの「指導を受けた履歴」や「同行回数」をSFA上で確認します。特定のメンバーへの指導が偏っていないか、指導内容にバラつきがないかをチェックし、指導の機会と質の公平性を確保できます。
終わりに
営業同行は多くの企業で実施されていると思いますが、毎年の恒例行事のようにただ先輩営業の後ろを付いて行く、では本来の営業同行の効果は出ません。
今回ご紹介させてもらったように、営業同行の目的を共有して自主的に行動してもらい、自ら学ぼうと言う意思を高めてもらわなければいけません。個性により要領の良い新人営業もいれば、不器用な新人営業もいます。先輩営業として同行する社員の得意な部分、不得意な部分を十分見極めながら教育をするようにすれば、営業同行の効果を最大化させることができます。
セールスイネーブルメント -経営層・営業マネージャーが取り組むべき営業改革-
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