従来の飛び込み営業のようなアウトバウンド型の営業スタイルは、現代では敬遠されつつあります。
アウトバウンドセールスに取って代わり主流となっているのがインバウンドセールスです。
インバウンドセールスは顧客にとって有益で魅力的に感じられる情報を発信することにより、買い手から近づいてきてもらうという営業手法です。
購買プロセスの変化に伴ってアウトバウンドセールスからインバウンドセールスへ移行している企業も増えています。
本記事ではインバウンドセールスへ移行するためのポイントや、インバウンドセールスの効果について詳しく解説します。
この記事の内容
飛び込み営業からの営業スタイルの変遷
かつて新規開拓の主流だった飛び込み営業は、現代において非効率となっています。
どれほど優れた商品でも、顧客が求めていないタイミングで一方的にアプローチしても成果は得にくく、担当者との面会に至る前に断られるケースが増えたためです。
このような成功率の低下に伴い、飛び込み営業は時間と労力に見合わない営業スタイルと認識されつつあります。
一方で、買い手の購買行動はインターネットの普及により大きく変化しました。
現代の消費者は、自ら商品を調べ、比較検討し、「欲しいタイミングで」購入を決定します。
この変化により買い手と売り手の間の情報量がほぼ同じになったことで、企業側からの一方的な情報提供の必要性が薄れました。
このような背景から、従来の「自分の足で稼ぐ」スタイルに代わり、顧客に見つけてもらい、関心の高まったリードに対してアプローチする
『インバウンドセールス』への転換が、現代の営業スタイルとして急速に進んでいるのです。
インバウンドセールスとは?
アウトバウンドセールスのような能動的(時には“強引”とも言い換えられる)な営業ではなく、有益な情報を発信して潜在的なニーズを掘り起こし、購買行動を支援することで受注へと繋げていくという営業スタイルが『インバウンドセールス』です。
インバウンドセールスの概念は、全世界で8,000社以上に導入されているインバウンドMAツールの「HubSpot」の創設者である、ブライアン・ハリガンとダーメッシュ・シャアにより、2005年に提唱されました。
営業活動を「Identify(識別する)」「Connect(繋がる)」「Explore(調査する)」「Advice(助言する)」という4つのステージに分け、それぞれのステージで最適な営業活動を行います。
各アクションについて詳しくは後述しますが、それぞれの段階で顧客の課題解決のための情報提供や提案によって信頼関係を築き、受注へと繋げるという営業がインバウンドセールスです。
つまり「顧客の立場に立った営業スタイル」と表現することもできますね。
関連記事:アウトバウンド営業とは?インバウンドセールスとの違いやツールを紹介
インバウンドマーケティングとの違い
インバウンドセールスと非常に親和性が高いのが、インバウンドマーケティングというマーケティング手法です。
営業とマーケティングの違いはありますが、根本的な「顧客主体」というスタイルは同じ。
インバウンドマーケティングの具体的な内容は、以下のように説明できます。。
1.まず、自社のWEBサイトやランディングページなどのオンライン上だけでなく、展示会やセミナーなどのオフラインの手段からも、有益かつ魅力的な情報を発信します。
2.次にリード(サイト訪問者や来場者)の情報を整理し、リードが興味を持っているカテゴリーの更に有益となる情報を提供していきます。
3.リードの興味・関心が高まったタイミングで、自社の商材をアピールし、購入や会員登録を促します。
4.商談を発生させて、営業担当者に引き継ぎます。。
インバウンドセールスにとって、インバウンドマーケティングと連携して進めることは、成果に繋げるためにも重要視されています。
様々なコンテンツを通してマーケティング施策を行う「コンテンツマーケティング」についての記事も併せてご覧ください。
関連記事:コンテンツマーケティングとは?実践のメリット・手法・具体事例を紹介
インバウンドセールスのメリットとデメリット
インバウンドセールスが現在の主流となっていることが理解できましたでしょうか?
ここからは、インバウンドセールスを行う際のメリットとデメリットについて解説します。
インバウンドセールスのメリット
インバウンドセールスを行うメリットは大きく3つあります。
3つのメリットを順番に解説します。
1. 受注率・成約率の向上と営業効率の最大化ができる
インバウンドセールスでは、顧客が自発的に興味を持ち、課題を認識した上で接触してくるため、商談が既に購買意欲の高い状態からスタートします。
アウトバウンド営業と比較して、アポイントメントから商談、そして成約に至るまでの各フェーズでの成功率が大幅に向上し、時間と労力を確度の高い見込み客に集中投下できるため、営業効率が格段に上がります。
2. 顧客満足度とロイヤルティの向上が図れる
営業担当者は、押し売りではなく顧客自身のタイミングでの情報収集をサポートする「アドバイザー」としての役割を果たすため、顧客との信頼関係が深く構築されます。
購入後の顧客満足度(CS)が高まり、リピート購入やクロスセル・アップセルに繋がりやすくなり、LTV(顧客生涯価値)の向上に大きく貢献することができます。
関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?意味と計算方法・LTV向上に有効な営業戦略
3. 営業コスト(人件費・労力)の削減
見込み客を自社のコンテンツや仕組みで自動的に集客・育成できるため、飛び込み営業やテレアポなどの新規開拓のための人件費や労力、及び関連コストを削減できます。
また、確度の低い見込み客へのアプローチが減ることは、営業担当者の精神的な負担軽減にも繋がり、組織の離職率低下にもつながります。
インバウンドセールスの注意点
一方でインバウンドセールスを行う際の注意点も存在します。
ここでは二つのポイントについて解説します。
1. 成果が出るまでに時間がかかる
インバウンドセールスは、顧客に有益なコンテンツを提供し、自社の認知度を高めることからスタートします。
そのため、コンテンツが検索エンジンなどで評価されるまでや、見込み客が安定的に集まり始めるまでに数ヶ月から半年以上の時間と継続的な取り組みが必要になります。
2. 初期投資とコンテンツ制作にリソースが必要
顧客を惹きつける質の高いコンテンツを継続的に制作するためのスキルや、獲得したリードを管理・育成するためのMA, SFAの導入コストが初期投資として発生します。
インバウンドセールスを行うためのステップ
では、実際にどのようにインバウンドセールスを進めたら良いのでしょうか?
それには、まず、買い手が購入に至るプロセスである「カスタマージャーニー」(バイヤージャーニーとも言います)を把握する必要があります。
カスタマージャーニーは、「Awareness(認識)」「Consideration(検討)」「Disision(決定)」という3つのステージに分かれます。
まだ企業と接点を持っていない「潜在見込み客」(プロスペクト)が企業や商材を「Awareness(認識)」し、さまざまな情報から「Consideration(検討)」して質の高いリードとなり、購入・発注を「Disision(決定)」して顧客へと移行していくというプロセスになります。
このカスタマージャーニーに合わせて、営業担当者は「Identify(識別する)」「Connect(繋がる)」「Explore(調査する)」「Advice(助言する)」という4つのアクションを実施していくのです。
関連記事:カスタマージャーニーマップとは?作り方やメリット・事例【テンプレート付き】
従来のセールス担当者との違い
このインバウンドセールスの手法は、従来のアウトバウンド型のセールスとは違って、顧客目線での営業活動をすることによって信頼関係を築いていきます。
そのため、営業担当者に求められることも、従来とは変わってきます。
【従来】そもそもプロスペクトがいることを把握していない
【インバウンド】プロスペクトに優先的にコミュニケーションを取る
【従来】型どおりのアプローチ方法で会話を進める
【インバウンド】パーソナライズされたアプローチで信頼関係を築く
【従来】興味を示したら、すぐにプレゼンテーションを始める
【インバウンド】興味を示したら、課題や目標を更に深く理解する
【従来】毎回同じようなプレゼンテーションを行う
【インバウンド】パーソナライズしたプレゼンテーション内容で課題解決に努める
【従来】期間限定の割引などを提供し、買い手の回答を急かす
【インバウンド】買い手のスケジュールに、営業スケジュールを合わせる
このように、従来の営業担当者は企業主体でしたが、インバウンドセールスでは顧客主体に営業プロセスを進めていくため、営業担当者もプロセスや行動、そしてそもそもの意識を変えていくことが必要となってくるのです。
これらの役割を果たすインサイドセールスチームを組織化する企業も増えてきております。
https://product-senses.mazrica.com/senseslab/sales/inside-sales2
4つのアクションとポイント

インバウンドセールスでは、営業プロセスを「Identify(識別する)」「Connect(繋がる)」「Explore(調査する)」「Advice(助言する)」という4つのアクションに区分し、カスタマージャーニー上でそれぞれの段階にいるリードに合わせたコミュニケーションを構築し、購入・発注に繋げます。
【1】Identify(識別する)
先述した通り、ユーザーにとっては必要なものを必要な時に購入できることが大事。
そのため、営業活動では、自社商材をどんな相手にどんなタイミングで提供するのかを識別することがカギとなります。
識別する方法としては、自社サイトへの訪問や、問い合わせフォームへの入力、eBookのダウンロードなどがあります。
このステージでは、特にマーケティングと密に関わり合いながら、潜在顧客を識別していく必要もあります。
【2】Connect(繋がる)
「Identify」のステージで識別されたリードと繋がるのがこのステージです。
相手にとって有益な情報を、最適なタイミングで提供することで、より質の高いリードへと移行させます。
リードの状況を把握して、リードが本当に求めている情報やコンテンツ(パンフレット、eBook、デモなど)を提供したり、無償のコンサルティングを提案したりします。
【3】Explore(探索する)
リードとのコミュニケーションで信頼関係を築いてきたことで、リードについて更に理解が深まってきたかと思います。
そこで、この「Explore」のステージが大事になります。
これまでの対話を通じて、リードが抱えている本質的な課題や目標を調べ、リードの本当に望んでいることやニーズを探り当てて、顧客に対しての理解を深めておきます。
このステージをしっかりと踏むことが、最終ステージのアクションを更に効果的にするのです。
【4】Advice(助言する)
リードを顧客へと移行させるための最終ステージとなります。
リードのニーズや課題を把握し、自社の商材がその課題解決の力になれると判断した上で、自社商材の提案へ進みます。
リードの業界での導入事例やお客様の声、導入のメリットや具体的な費用対効果など、今までのコミュニケーションで得られた情報を基にした情報を提供し、リードがスムーズに稟議できるよう支援します。
インバウンドセールスの効果
しっかりとターゲティング・セグメントをし、質の高い商談やヒアリングを行うことで、顧客の課題解決に寄り添い受注率を伸ばすことのできるインバウンドセールス。
必要な人に必要な情報を必要な時に提供することで、営業に無駄なリソースをかけることもなく効率的に営業活動を進めることができます。
また、顧客は自主的に商材に興味を持ってくれた人や企業ばかり。
商材についてさまざまなことを調べ、多くの情報を得た上で購入しているため、購入後も良好な関係性を築きやすくなります。
そのため、クロスセルや継続的な受注にも繋がりやすくなるのです。
更に、インバウンドセールスによって自社商材に興味・関心のある業界や企業を把握することができるため、アウトバウンドセールス部隊は手当たり次第に営業をかけるのではなく、どのようなターゲットにどのようなタイミングでアウトバウンドセールスを実施すればいいのかも分かるようになります。
インバウンドセールスとアウトバウンドセールスを組み合わせることによって、営業組織がより強化されるのです。
インバウンドセールスのコツ
インバウンドセールスには様々な課題がありますが、効果的に実施していって最大限のメリットを享受するためには、ポイントを押さえて運用していく必要があります。
具体的なインバウンドセールスのコツを見てみましょう。
アポ取りのコツ
最初に紹介するのは、アポイントメントを取るためのコツです。
特にアポが取りやすい3つのポイントを紹介します。
買い手からアクションがあったらすぐにアポ取り
「資料請求から1分以内に架電をすると、アポイント成功率は70%」というアメリカのデータがあります。
これが、10分以内になると49%、1日以内になると33%、1週間以内になると25%と、だんだんとアポイント設定の成功率は下がってしまいます。
つまり、リードが興味を持ったタイミングに近ければ近いほど、アポイント設定に繋がるということ。
逆に言うと、時間が経つにつれて興味を失っていってしまうのです。
1分以内の架電は難しいかもしれないですが、資料請求やお問い合わせが来たらなるべく30分以内などの早いタイミングでアポ取りを行うことがポイントです。
アポイント予約フォームを作る
前述の通り、買い手が興味を持っているタイミングが最もアポイントを取りやすいタイミングとなります。
そのため、資料請求やお問い合わせフォームと一緒に、アポイント予約フォームのようなカレンダー機能を作っておくこともおすすめ。
これにより、リードの情報を入手してから電話やメールをしてアポイントを取るという手間もなくなり、リードの指定した日時とのスケジュールの合う営業担当者を訪問させることで効率的に営業活動を実施することができます。
専任のアポインターを配置する
資料請求やお問い合わせをしてくれたリードが全て、上記のアポイント予約フォームも入力してくれるとは限りません。
そこで、リードが入力した電話番号に架電し、商談のアポイントを取る“アポインター”を配置することで効率的にアポイントを取ることができます。
営業担当者がアポ取りの架電までを担当してしまうと、架電に時間を取られて商談の時間を確保できなかったり、逆に商談に時間を取られてリードへの架電が遅くなってしまったりするため、専任者を配置して業務を分けると良いでしょう。
メールでのアポイント調整をスムーズにしてくれるツールをアポインター部隊で導入してみるのもいいかもしれません。弊社のツールですが、Gmailユーザーが無料から使えるものもあります。
決裁者にアプローチするコツ
資料請求やお問い合わせフォームで接点を持ったリードは、決裁者でないことがあります。
リードは窓口である担当者で、購入/発注は意思決定権のある決裁者が行うという場合、担当者から決裁者へ稟議なり上申なりを行う必要が出てきます。
つまり、リードに寄り添って購入までをサポートするインバウンドセールスでは、決裁者にアプローチすることも必要不可欠です。
そのためには、窓口である担当者との関係を構築し、さまざまな情報を得て課題やニーズについて把握することで、決裁者の関心を引く提案内容を提供することが可能になります。
リード(=担当者)とのヒアリングや会話から決裁者の抱えている課題を掘り起こし、決裁者の関心を引く情報やコンテンツを提供することができれば、決裁者とのアポイントにも繋がりやすくなるでしょう。
決裁者にアプローチすることで、受注に更に近づくことができますよ。
PDCAを回すコツ
仕事をしていく上で重要視されているPDCAですが、PDCAサイクルを回さずにやみくもに施策を実施している企業が多いことも事実です。
PDCAを回すことで、実施した施策の効果を把握し、改善案や次回施策の検討に役立てることができるので、インバウンドセールスで成果を出すためにはPDCAサイクルを継続して回してくことは非常に大事。
そのためにも、しっかりとした土台となる設計をしておく必要があります。
具体的には、営業現場目線でのターゲティング、過去のインバウンド実績からの目標数設定、獲得単価の目標設定などです。
これらが決まったら、インバウンドを獲得するための手法(SEO対策、ランディングページ制作、インターネット広告、展示会、セミナーなど)を策定します。
このような設計をしておくことで、実施後にPDCAを回す際の振り返りがしやすい環境を作ることができるのです。
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インバウンドセールスで得られるスキル
インバウンドセールスを取り入れることにより、営業組織にとってのメリットだけでなく、営業担当者にとってもメリットがあります。
それが、さまざまなスキルを得られることです。
例として、以下のようなスキルを得ることができます。
ヒアリング力
買い手の課題やニーズを把握し、本当に求めていることを掘り起こすためには、徹底したヒアリングが必要となります。
質問攻めにするのではなく、時には何気ない会話から、買い手の情報を引き出すこともあります。
買い手本人ですら把握していなかった課題の発見を手助けすることもあるので、相手の立場に立ったヒアリング力が求められます。
提案力
徹底したヒアリングで得た情報から、その課題解決のための提案をし、自社の商材の受注に繋げます。
「どんな課題を抱えていて、その課題を解決するために、商材をどう活用すればいいのか」という、一人ひとりの課題に寄り添った提案をすることが、インバウンドセールスには必要です。
時にはクロスセルやアップセルを促す提案も組み込みながら、リードとの関係を構築していくため、高い提案力が身に付くでしょう。
分析力
データを分析して、リードのニーズを探っていくことも必要とされるインバウンドセールス。
そのため、分析力も身に付いていなければ、的確な営業をすることができません。
さまざまなデータを分析し、最適なタイミングで有益な情報を得ることがインバウンドセールスには欠かせないのです。
関連記事:データ分析とは?分析の目的や仮説思考についても解説!
終わりに
購買プロセスの変化により、営業スタイルも変化を遂げることが必要となっています。
さまざまな情報を得た買い手にとっては、ゴリ押しの営業はもはや苦痛でしかありません。
買い手の潜在ニーズや課題を発見し、その解決の糸口を見つけるために、さまざまな有益な情報を提供したり無償でのアドバイスを実施したりするインバウンドセールスは、これからの時代に更に必要となってくるでしょう。
まさに今、インバウンドセールスへ転換する波が来ているのかもしれません。
明日からはじめるインサイドセールス
インサイドセールスの立ち上げのポイントを紹介します。「アポイントの獲得率が低い」や「受注率が低い」といった課題別の考え方や対策まで紹介しています!
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