売上予測は、単なる「数字の皮算用」ではありません。

在庫管理、人材採用、資金繰りなど、経営の意思決定を左右する重要な指標です。

しかし、多くの企業では担当者の「勘」や「経験」に頼った予測が行われ、実際の結果と大きく乖離してしまうケースが後を絶ちません。

本記事では、売上予測の基礎知識から、精度の高い予測を立てるための具体的な計算方法、精度を向上させるポイントまでをわかりやすく解説します。

正確な予測スキルを身につけ、堅実な事業成長を目指しましょう。

売上予測とは?

過去の売上実績や市場動向などのデータを分析し、将来の特定期間(月・四半期・年)にどれくらいの売上が見込まれるかを予測することです。

よく「売上目標」と混同されますが、両者は明確に異なります。

  • 売上目標:達成したい理想の数値(願望が含まれる)
  • 売上予測:現状の延長線上で着地するであろう現実的な数値(客観的な見込み)

目標と予測のギャップを早期に把握し、その差を埋めるための対策を打つことが事業成長には必要不可欠です。

売上予測の計算方法

売上予測を算出する方法はいくつかありますが、最も基本的かつ汎用性の高い計算式は以下の通りです。

「売上予測=見込み客数×成約率×平均単価」

BtoB営業のように、個別の商談(案件)ベースで管理している場合は、以下の「パイプライン分析」を用いた計算がよく使われます。

売上予測=各案件の受注予定金額×各案件の受注確度

【計算例】

  • 案件A(100万円・確度80%)=80万円
  • 案件B(200万円・確度50%)=100万円
  • 案件C(50万円・確度20%)=10万円
  • 合計予測額=190万円

案件ごとの確度を掛け合わせることで、より現実的な着地見込みを算出します。

売上予測に必要なデータ

精度の高い予測を立てるためには、正確なデータの収集が不可欠です。主に以下のようなデータが必要になります。

  • 過去の売上実績:前年同月比や季節ごとのトレンド
  • 営業パイプライン情報:現在進行中の案件数、受注確度、受注予定日
  • 顧客データ:顧客の予算感、決裁フロー、過去の購入履歴
  • 市場要因・外部環境:競合の動き、業界の景気動向、法改正(増税・規制強化など)

データは「集めて終わり」ではありません。

常に最新の状態にアップデートし続けること、そして営業担当者の主観を排除し、客観的な事実として記録することが、予測のブレを最小限に抑える鍵となります。

売上予測の活用用途

売上予測は、単に「いくら売れるか」を知るためだけのものではありません。

その数値は、企業活動のあらゆる場面で活用されます。

事業計画策定

年間の事業計画の策定において、売上予測はすべての「根拠」となる重要な数字です。

単なる目標値ではなく、予測に基づいた現実的なリソース配分を行うことで、経営の安全性と成長スピードを両立させることができます。

具体的には、以下の重要な判断に直結します。

  • 投資判断の最適化:設備投資、広告宣伝費、新製品の研究開発費など、「攻めの投資」をどのタイミングで実行するかの決定。
  • 適切な目標設定(KPI):全社目標を達成可能な部門別・個人別の目標に落とし込み、組織のモチベーションを維持する。
  • 対外的な信用の獲得:銀行融資や投資家への説明において、精度の高い予測(予実管理)は経営能力の証明となり、資金調達を円滑にする。

予測が不正確だと、身の丈に合わない投資によるキャッシュフローの悪化や、逆に慎重になりすぎた結果としての「成長機会の損失」を招く恐れがあります。

予算管理の健全化

売上の見込みが正確であれば、それに応じた適切な経費予算を組むことができます。

ビジネスにおいて利益を確保するためには、予測に基づいたコストコントロールが非常に重要です。

逆に予測が甘いと「売上が未達なのに広告費や採用費を使いすぎてしまい、大幅な赤字になる」という事態を招きかねません。

精度の高い予測があれば「見込みが上振れそうだから広告費を追加してさらに伸ばす」「着地が悪そうだから不要不急の経費をカットする」といった、状況に合わせた柔軟な予算配分が可能になり、利益を残しやすい財務体質を作ることができます。

関連記事:予算管理とは?目的・手順・管理のポイントや役立つツールを解説

在庫・人材のマネジメント

需要を正確に予測することで、企業のリソース(人・モノ)を最適化し、無駄なコストを徹底的に排除できます。

対象 最適化の効果
在庫管理
(モノの最適化)

「売れる分だけ仕入れる」が可能になります。

  • 過剰在庫による保管コストや廃棄ロス(死に在庫)を防ぐ
  • 在庫不足による販売機会の損失や、納期待ちによる顧客満足度の低下を回避する
  • 現金の固定化(在庫)を防ぎ、キャッシュフローを改善する
人材管理
(ヒトの最適化)

「必要な時に必要な人員配置」が可能になります。

  • 繁忙期に向けた計画的な採用・教育で、急な採用コスト増を防ぐ
  • 来店客数予測に基づいたシフト管理で、待機時間や無駄な残業代を削減する
  • 生産性を最大化し、利益率を高める

予測に基づいたリソース配分を行うことで、利益率の高い筋肉質な経営体質を作ることができます。

キャッシュフロー管理

企業が倒産する原因の1つに、帳簿上は利益が出ているのに手元の資金が尽きる「黒字倒産」があります。

特にBtoBビジネスでは、売上が計上されてから実際に入金されるまでに1〜2ヶ月のタイムラグが発生する場合が多いです。

そのため「売上の数字」だけを見て安心していると、支払いのタイミングで現金が足りなくなるリスクがあります。

正確な売上予測に基づき「いつ」「いくら」現金が入ってくるかを把握できれば、以下のような先手の対策が可能になります。

  • 融資の確度を高める: 資金が枯渇する直前ではなく、余裕がある段階で銀行に相談することで、スムーズな資金調達が可能になる。
  • 支払いサイクルの調整: 取引先への支払いを調整したり、大型の投資を翌月に回したりする。

売上予測は単なる数字の管理ではなく、会社にとって最重要の現金を守り、企業の生存率を高めるための生命線と言えます。

売上予測の立て方

実際に売上予測を立てるには、大きく分けて2つのアプローチがあります。

過去の実績に基づいて作成する

過去の売上データを分析し、未来を予測する方法です。

「前年比〇〇%成長」といったトレンドや、季節変動を加味して算出します。

  • メリット:データがあれば比較的簡単に計算できる。
  • デメリット:市場の急激な変化や、新規事業など過去データがない場合には対応しにくい。

すでに安定した事業や、リピート購入がメインのビジネスモデルに適しています。

【計算例:今年の6月の売上予測】
昨年と一昨年の実績から「成長率」を割り出し、今年の売上を予測します。

算出ステップ 数値 備考・計算式
1. 一昨年の実績 700万円
2. 昨年の実績 800万円
3. 年間成長率 14% (800 - 700) ÷ 700
4. 今年の予測 912万円 800 × 1.14

営業パイプラインに基づいて作成する

現在進行中の商談を一つひとつ積み上げて予測する方法です。

各案件の進捗状況ごとに受注確度を設定し、合計額を算出します。

  • メリット:直近の営業状況をリアルタイムに反映できるため、短期的な予測精度が高い。
  • デメリット:各営業担当者が入力する情報の正確性に依存する。

変化の激しい市場や、BtoBの提案型営業においては、この手法が一般的です。

【計算例:今月の受注金額予測】
「初回訪問」から「受注」までの各プロセスにおける通過率を用いて算出します。

算出ステップ 数値・条件 備考・計算式
1. 前提データ 単価 20万円
初回訪問 100件
2. プロセス通過率 60% → 50% → 50% → 60% ヒアリング → 提案 → 見積 → 受注
3. 受注数の算出 9件 100 × 0.6 × 0.5 × 0.5 × 0.6
4. 売上予測 180万円 9件 × 20万円

関連記事:パイプライン管理とは?効果的な営業分析・改善のポイントを解説 

売上予測の精度を高める方法

売上予測で最も課題となるのが「精度」です。「予測と実績がいつもズレる」という場合、以下のポイントを見直してみましょう。

統一した基準を作る

営業担当者によって「確度A(受注確実)」の基準がバラバラだと、予測の合計値は大きく狂います。

「見積書を提出したらBランク」「決裁者と合意できたらAランク」といったように、組織全体でフェーズの定義や確度の基準を統一しましょう。

主観を排除し、誰もが同じ基準で判断できるルール作りが不可欠です。

行動ベース(「何をしたか」「何をもらったか」)で定義することで、担当者ごとのブレを防げます。

以下は行動基準の一例です。

ランク 確度 定義・判定基準
A 90% 【受注確実】
決裁者から口頭での内諾を得ている。または契約手続き中。
B 60% 【提案中】
見積書を提出済みで、予算感について合意が取れている。競合より優勢である。
C 30% 【案件化】
具体的な課題をヒアリングし、導入時期(いつまでに欲しいか)が明確になっている。

客観的なデータを扱う

「担当者の希望的観測」や「気合」を予測に含めてはいけません。

「過去にこのフェーズまで進んだ案件の成約率は30%だった」というような、事実(ファクト)に基づくデータを活用しましょう。

個人の感覚ではなく、統計的な数値を重視することで予測の客観性が高まります。

もし客観的なデータに基づかず、願望を含んだ予測を続けていると、以下のような経営リスクを招くことになるでしょう。

  • リソース配分の失敗:過大な売上予測を信じて人員採用や設備投資を行った結果、実際の売上が伴わず、固定費だけが増大して利益を圧迫します。
  • 在庫リスクとキャッシュフローの悪化:「売れるはず」という見込みで過剰な仕入れや製造を行い、大量の不良在庫を抱える原因になります。最悪の場合、資金繰りの悪化により黒字倒産のリスクさえ生じます。
  • ステークホルダーからの信頼喪失:「毎月、予測と実績が大きく乖離する」状態が続くと、銀行や株主、経営陣からの営業部門に対する信頼が失われ、将来の投資判断が鈍化します。

変動要因を明らかにする

売上は内部要因だけでなく、外部要因にも影響を受けます。

  • 季節性:決算期前の駆け込み需要や、閑散期の落ち込み
  • 市場動向:法改正、競合他社の新商品発売、景気変動

過去データから算出した数値に対し、これらの環境変化を加味してプラス・マイナスの補正を行うことが重要です。

定量的な情報だけでなく、定性的な要因を予測モデルに組み込むことで、想定外のズレを防ぎ、より実態に即した精度の高い着地見込みを算出できます。

SFAを導入する

Excelでの売上予測には限界があります。入力ミスや集計の手間が発生するほか、リアルタイムな状況把握が難しいためです。

精度を高めるためには、SFA(営業支援システム)の導入が効果的です。

SFAを使えば、日々の営業活動を入力するだけで、AIが過去の傾向を分析し、高精度な売上予測を自動で算出してくれるツールもあります。

▶︎▶︎SFA/CRMで効果的な売り上げ予測をする方法

Excel管理とSFA導入後の具体的な違いは、以下の通りです。

比較項目 SFAなし(Excel管理) SFAあり(導入後)
入力の手間 入力やコピペ作業が煩雑。
転記ミスや数式エラーが起きやすい。
日々の活動記録と連動。
選択式やスマホ入力で負荷を軽減。
リアルタイム性 月末に締めないと数字が見えない。
状況把握にタイムラグが発生する。
常に最新データが自動反映。
会議資料を作る必要がない。
予測の根拠 担当者の「勘」や「経験」に依存。
希望的観測が入りやすい。
過去データやAI分析に基づく。
客観的な数値で着地見込みを算出。
案件の可視化 詳細な経緯がブラックボックス化。
担当者が不在だと状況が不明。
プロセスや進捗をチームで共有。
停滞案件への早期対策が可能。

関連記事:

まとめ

売上予測は、企業活動において非常に重要です。「過去の実績」や「現在のパイプライン」を正しく分析し、精度の高い予測を立てることで、適切な在庫管理、投資判断、そして資金繰りが可能になります。

しかし、人の手による管理には限界があり「基準のバラつき」や「集計のタイムラグ」が精度の低下を招きがちです。

そこでおすすめなのが、営業支援ツール「Mazrica Sales」です。Mazrica Salesは、直感的な操作で案件管理ができるだけでなく、過去の実績データや現在の進捗状況をAIが解析し、将来の売上を自動で予測します。

「どの案件が受注に近いか」「どこにリスクがあるか」が一目でわかるため、根拠のある戦略的な営業活動が実現します。

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投稿者プロフィール

静 理絵
静 理絵

ITベンチャー企業にて、インサイドセールス・マーケティング組織の立ち上げを経験。その後はSaaSのマーケターとしてコンテンツ作成や記事制作、ウェビナー・カンファレンスの企画、クリエイティブ制作などを約4年間経験。現在はBtoBマーケターとしてCRM領域を担当し、メールマーケティングやコンテンツ制作に注力中。

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