アカウント営業とは、特定の顧客と長期的な信頼関係を築き、安定した継続的な売上を創出するための営業戦略です。

本記事では、従来の営業手法(ソリューション営業など)とは何が違うのか、そしてアカウント営業を成功させるために必要なスキルセットについて解説します。

アカウント営業とは

アカウント営業とは、ターゲットとなる顧客を絞りこみ、その顧客に対して深く入り込んで課題解決の提案をし、顧客内シェアを高めていく営業スタイルです。

その顧客の売上に責任を持って取り組むという点で特徴があります。顧客と一心同体のようになって、顧客の問題点とソリューションを提案していくスタイルなのです。

アカウント営業で重要なことは、とにかく顧客に向き合うことです。

顧客の表層的な部分のみをみて判断するのではなく、顧客のことを調べ上げ徹底的に分析する必要があります。

アカウント営業とソリューション営業の違い

アカウント営業は、特定の顧客アカウントに対して、長期的な関係を構築し、継続的な売り上げを目指す営業手法です。ここでは既存の顧客管理やクロスセル、アップセルが主な役割となります。

一方で、ソリューション営業は顧客の抱える課題を深く理解し、その問題解決に特化した製品やサービスを提案する手法です。

ここではカスタマイズされたソリューションの提供により、一回限りの取引ではなく、長期的なパートナーシップを築くことが狙いです。両者の違いは、アプローチの焦点が既存のリレーションシップの深耕か新規の問題解決かという点にあります。

従来のルート営業との違い

従来の営業との違いは、①関係性②顧客の選択③単価の3つの視点から説明することができます。

関係性とは言うまでもなく、アカウント営業の方が従来型の営業よりも深い関係性を持つと言うことです。

営業パーソンは「数打ちゃ当たる」の方式をやめ、1つ1つの企業と深く向かい合う必要性が出てきているのです。

「顧客の選択」は、アカウント先となる顧客を絞り込んで選定することを指しています。

全ての顧客にアカウント営業をすると言うことは、営業パーソンの数を現在の人数よりも大幅に増やす以外不可能です。

そこで、「どの顧客にならより良い提案ができるか?」「どの顧客の助けになれそうか?」ということをあらかじめ調べ、その上でアカウント営業を進めていく必要があるのです。

「単価」に関しては、アカウント営業の方がより高い単価での取引を想定しています。

営業パーソンは相手の企業にとって一種のコンサルタントとなり、相手企業の発展のために従来の営業よりもよりレベルの高い提案を行うため、高い単価も自ずと受け入れてもらえるのです。

また、他の競合企業よりも選ばれる確率も高くなります。

アカウント営業のプロセス

アカウント営業のプロセスには主に6つのプロセスがあり、そのプロセスをぐるぐると回していくスタイルとなります。

アカウント営業で長期的な利益を引き出す!|アカウント営業でもSFAを使いこなすコツ| Mazrica Sales (旧 Senses)  Lab.|図

0.ターゲティング

顧客とする企業を、企業の情報を集めつつターゲティングを行なって絞り込んでいきます。

ターゲティングが済んだら、1つ目のプロセスを行う前に、全体的な目標を想定する「アカウントビジョン」を決定します。

中長期的に相手企業とどのような関係になっていたいか、最終ゴールを決めておくのです。

プロジェクト中に迷ったときも、このゴールを決めておくことで迷走しすぎないようになります。

関連記事:ターゲティングとは?代表的なフレームワーク(STP分析・6R)を紹介

1.事業課題の推考・仮説の策定

ターゲティングとアカウントビジョンの決定が終わったら、相手企業の課題を探るプロセスに進みます。

相手企業がどのような問題を抱えているのか、手に入れられる限りの資料を用いて分析を行います。

しかし、この時点では事業課題についてはあくまで仮説を持つだけで十分です。

この後、相手企業の社員との対話を進めていくことで仮説を深めることができるからです。

2. 関係性の深化

相手企業の担当者と実際に接触し、人脈を築いていきます。ヒアリングを進めながら1.で立てた仮説の検証をして、関係性を深めて行きます。

この際には、実際の商談でも役立つヒアリングの技術が大事です。

相手の話をじっくりと聞き、自分に何ができそうかを考えていきます。

関連記事:BANTとは?営業のヒアリングで覚えておくべきフレームワーク

3.アカウント戦略の立案

「関係性の深化」のフェーズで得た情報を元に、いよいよ自社の商品を使って何ができるかを考え、この後どのように提案を行なっているかを考えます。

自社の利益を第一にするのではなく、提案するソリューションが相手企業の成果の向上につながることが明確な提案を作り出すことが大事です。

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関連記事:アカウントプランとは?重要・大型商談を受注に導く営業

4.事業課題の共有・ソリューション提案・サービス提供

いよいよ相手企業とじっくりと対話して課題を共有、ソリューションを提案、サービスを提供するフェーズです。

このフェーズは以下の3部構成になっています。

・課題を共有しじっくりと話し合いながら調整を繰り返し行う
・ソリューションを提案する
・サービスを提供

アカウント営業の強みは、企業と向き合ってじっくりと結論や提案を微調整していくことができる部分にあります。

しっかりと対話し、お互いにベストな提案ができるように努力しましょう。

このときにクロージングが重要となります。しっかりと確認しておきましょう。

提案したソリューションを受け入れてもらえれば、それを元に実際にソリューションを提供します。

関連記事:クロージングとは?営業の成果を上げるコツ・テクニック14選

5.関係性の拡大

提供したソリューションの効果を測定し、調整を実行したり、レビューを行なったりします。

新たに見つかった課題についてさらに仮説等を立てることもありますし、同様の問題を抱えている他部署を紹介されることもあります。

じっくりと向き合うからこそ短期的な関係性で終わらないこともアカウント営業の強みなのです。

アカウント営業のメリット

アカウント営業を行うことで以下のようなメリットがあります。

LTV向上(売上アップ)につながる

アカウント営業の強みは、顧客一人ひとりに対し徹底したリサーチを行う点にあります。この深い理解に基づき、顧客が抱える課題に対して的確かつ最適な提案を実行できます。

また、長期的な信頼関係が構築されることで、顧客が新たな課題を抱えた際に、その情報を共有してもらえる可能性が高まります。

これにより、既存製品・サービスのグレードアップや契約内容の拡大といったアップセル・クロスセルの機会が得られ、結果としてLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を効果的に上昇させることが可能です。

LTVとは、顧客が自社との取引開始から終了までに、どれだけの利益をもたらすかを示す重要な指標です。ひとりの顧客からの利益を最大化するためにも、顧客情報を深くリサーチし、課題解決のために一貫して寄り添う姿勢を重視しましょう。

関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?意味と計算方法・LTV向上に有効な営業戦略

顧客との信頼関係が良好になる

アカウント営業は、特定の顧客と長期的な信頼関係の構築を重視しているため、他の営業手法と比較して、顧客が抱える課題への理解を深めやすい特徴があります。

顧客の本質的な課題を深く把握するためには、顧客の業界知識、ビジネスモデル、そして組織構造といった多角的な情報収集が不可欠です。

これらの情報に基づいて、自社の商品やサービスの提案を顧客専用に最適化することで、ライバル企業よりも優位に立つ精度の高いアプローチを実行できます。安定した業績を維持するためにも、あらゆる角度から情報収集を行い、顧客理解を徹底的に深めましょう。

営業の型化が進む

アカウント営業を実施することで、各顧客を深く知り、提案するノウハウが蓄積されていきます。

営業ツールの活用で情報収集がスムーズにもなります。そこで蓄積された知識やノウハウは、似たような問題を抱える企業に活かすことができます。他の営業も時間をかけずに効率よく行うことができます。

アカウント営業の注意点

メリットが多いアカウント営業ですが、実行している中での注意点もお伝えします。

属人化のリスクがある

アカウント営業を進めていると顧客との関係性が深くなります。相手企業の担当者と実際に接触し、人脈を築いていきます。ヒアリングを進めながら仮説の検証をしながら関係性を深めて行きます。

その結果、顧客情報やノウハウが担当者個人に蓄積され社内で情報が共有されないことで属人化が起こりやすくなります。

社内で情報共有する仕組みを作り情報を属人化させない工夫が必要です。

関連記事:チーム営業(チームセリング)のメリットとは?トラブル例やおすすめツールも紹介

売上向上までに時間がかかる

仮設構築〜提案、関係性を深耕には時間がかかります。短期間での成果が見込めない場合があります。

またアカウント営業に実行には新人営業の育成に時間がかかります。導入したばかりの頃は、営業工数が多く別な営業手法よりも工数の割に成果出ないリスクもあります。

営業成績が売上につながるまでに時間がかかる点を念頭に置いたうえで、アカウント営業に取り組むことが大切です。

顧客への依存度が高まる

アカウント営業は、特定の顧客と長期的な関係を構築し、継続的な売上を目指すため、顧客ひとりあたりの取引単価が高くなる傾向があります。

しかし、これは同時に、一社あたりの売上に依存する比率が高くなることを意味します。そのため、もし主要顧客との契約が終了した場合、企業の収益は大幅に減少するリスクを伴います。

この収益リスクを回避するためには、新規顧客との関係構築に時間がかかることを念頭に置き、既存顧客の契約解除を防ぐ対策を取れるようにしましょう。

具体的には、定期的なフォローアップの徹底や、顧客の新たな課題解決に迅速に取り組む姿勢が不可欠となります。

アカウント営業に必要なスキル

集中的にある企業の課題を見出しソリューションを提供するアカウント営業ですが、どのようなスキルが必要とされるでしょうか。

その中でも特に重要な4つのスキルを解説します。

コミュニケーションスキル

アカウント営業において長期的な信頼を獲得するためには、顧客から直接提示される要望に応えるだけでなく、ヒアリングやディスカッションを通じて、顧客自身もまだ気づいていない潜在的な課題を明らかにする必要があります。
そのためには、受け身の姿勢ではなく、顧客と認識を共有し、課題解決に向けて共に進むコミュニケーション能力が不可欠です。
顧客にとって真に価値あるビジネスパートナーとなるために、営業担当者自身が仮説を立て、積極的に課題解決へと取り組む姿勢が重視されます。

戦略的思考スキル

アカウント営業において最も重要なのが、一回限りの取引ではなく、中長期的な成長戦略を描く力です。

顧客の現状課題だけでなく、3年後、5年後の事業成長を見据えたアカウントプラン(顧客の成長戦略)を策定する必要があります。

具体的には、短期、中期、長期の明確なゴールを設定し、自社ソリューションを通じて顧客の事業成長そのものを支援するという姿勢が求められます。

関連記事:戦略的意思決定とは?決定プロセスや必要情報を解説

交渉スキル

アカウント営業における交渉力は、単に価格や契約条件を調整するスキルではありません。

自社と顧客の双方にメリットがある「Win-Win」の関係を築く力です。

価格交渉で譲歩するだけでなく、顧客の利益を最大化する方法(例:運用効率の向上や新たなビジネスチャンスの創出など)を提案に組み込むことが重要です。

合意形成においては、自社と顧客双方のゴールが達成される形で落とし所を見つけ、長期的な関係維持に繋げることが鍵となります。

デジタルツール活用スキル

現代のアカウント営業は、テクノロジーの活用なくしては成り立ちません。

CRMやSFAといったデジタルツールを活用し、営業活動を効率化・科学的に進める力が必要です。

具体的には、CRMを活用して顧客情報を一元管理し、チーム全体で共有します。

また、Google Analyticsなどのデータ分析ツールを使い、顧客の行動データから商談戦略を策定します。

さらに、ZoomやTeamsなどのオンライン商談ツールを活用し、リモート環境での顧客エンゲージメントを強化することも、必須のスキルとなっています。

アカウント営業でのSFAの位置付け

通常、営業を行う上で大いに助けとなるのがSFAです。

SFAは営業活動を行う上で重要な情報を蓄積し、一目で営業活動の進捗が確認できるようになっています。

しかし、そのSFAはアカウント営業には向かない、と言われています。

関連記事:SFAとは?CRM・MAとの違いや選び方から成功事例まで解説

SFAはアカウント営業に向かないと言われる理由

通常の営業活動を「量」だとすると、アカウント営業は「質」が勝負です。

アカウント営業のためには量的に相手を測るのではなく、しっかりと相手企業のことを調査した「質」重視の判断が重要になります。

SFAの効果は主に「データの量」に依存する部分が多く、そのためにアカウント営業には向かないというのです。

SFAは多くのデータを元に「このような傾向を持つ企業にはこのような提案がベター」という判断をすることができます。しかし、アカウント営業で求められているのはその会社にぴったりと合った「ベスト」なソリューションなのです。

アカウント営業に対応したSFA

しかし、SFAには多くの種類があり、SFAの中にもアカウント営業に向いているものもあります。

弊社の提供するMazrica Salesはアカウント営業にも対応しています。

Mazrica Salesでは、アクション機能で情報の共有がスムーズ・会議も資料を作らず楽に行うことができます。

また、案件ボードやアクション機能を活用することで、営業活動で現在何を行なっているかや現在どのフェーズにいるかが一目で分かるようになっています。

Mazrica Sales内に蓄積されたデータを用いて、画面さえ見れば全員がその情報を共有することができます。

グループウェア

SFAで客観的にアカウント営業の工程を調べて分析することによってアカウント営業における新しい傾向が見えてくることもあります。

アカウント営業にとってSFAは決して単なる無力の存在ではないのです。

アカウント営業は「ベストなソリューション」を見つけることが鍵ですが、そのベストなソリューションを提案するための営業活動の仕方には様々なパターンがあります。

その際に、分析が容易にできるSFAを使って営業方法について調査し、その結果を用いて相手企業の担当者に自ら考えた最高のソリューションを届けることも1つの手なのです。

例えば、従業員100名規模のIT業界への営業改革の提案には様々な手段が存在しますよ。

しかし、SFAツールを提案したら失注する可能性があるし、MAを提案しても失注する可能性があります。まずは初回商談で営業課題のヒアリングを資料Aを使って行えれば、着実に進めるかもしれません。

SFAは、このとき、初回商談ではA資料を使い、フォローメールでは過去の〇〇社とのメールの内容をおすすめできるような存在なのです。

つまり、あなたが最高のソリューションを持っていたとして、その際の営業活動の一部であるソリューションの提案の仕方・タイミングには様々なパターンが存在します。

その際、SFAはどのような行動がより安全で成約可能性が高いかを教えてくれるのです。

また、Mazrica Salesには受注予測機能であるAI搭載サービスがあり、92%の確率で受注予測ができます。(AIフォーキャスト
このサービスを使って提案の潜在的なリスクに気がつくこともでき、アカウント営業の受注率の上昇の手助けができると言えるでしょう。

SFAも使い方や種類によってはアカウント営業に役立つことができるのです。

関連記事:AI機能搭載のおすすめSFA10選|できることやメリットを解説

アカウント営業におすすめのツール

アカウント営業に活用できるツールとして、DSRツールもあります。

デジタルセールスルーム(DSR)とは、BtoB企業が見込み顧客と情報や営業コンテンツを共同し、効率的な営業活動を行うことを目的としたオンラインスペースのことです。

デジタルセールスルームでは、売り手と買い手がリアルタイムでチャットのやり取りをしたり、チャットや動画メッセージ、資料の共有などによってオンデマンドでの交流を行うことができます。

日本初のデジタルセールスルーム「Mazrica DSR」

Mazrica DSRは営業と顧客においてやり取りされる、

  • 製品紹介や提案書などの資料
  • 参考Webページやデモンストレーション動画などのURL
  • 議事録や案件サマリーなどのテキストメモ
  • 約束や宿題、確認事項など双方のタスク管理
  • 連絡や質問などのチャットコミュニケーション

これらの情報を、たったの数十秒で構築できる堅牢な招待制マイクロサイト(専用Webページ)のURL一つにまとめて共有します。

営業は、マイクロサイト内での買い手の行動情報を取得し顧客分析を可能にすることで、求められている情報を求められているタイミングで提供できるようになります。

これにより買い手は、より早く、楽に、知りたい情報を取得でき購買体験が向上します。
営業は、より早く、確実にお客さんと信頼関係を築きながら案件を受注できます。

営業も顧客も、互いに協力し合い案件やプロジェクトを前に進められるようになるのです。

▶︎▶︎Mazrica DSRの紹介資料はこちら

終わりに

アカウント営業とは、アプローチ対象を特定の顧客に絞り込み、長期的な信頼関係を構築した上で提案を行う戦略的な営業手法です。

この手法には、LTV(顧客生涯価値)や顧客満足度を高められる点や、成功ノウハウを蓄積して他の営業戦略にも応用できる点など、多くのメリットがあります。

アカウント営業を成功させる上では、顧客と良好な関係性を保ちつつ、現段階で最も適切なアプローチは何かを常に検討していくことが重要です。

デジタルセールスルーム(DSR)を活用することで、買い手は、より早く、楽に、知りたい情報を取得でき、営業は、より早く、確実に顧客と信頼関係を築きながら案件を受注できます。

DSRについて、さらに詳しく知りたい方は以下の資料をDLしてみてください。

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