BtoB営業、特に複数の部署や関係者が関わる案件では、ひとつの意思決定の背景に、想像以上に多くの人の判断と事情が重なっています。名刺に書かれた肩書きを見ても、この案件で誰がどう関わり、誰の意見が重く響くのかは、そのままには見えてきません。
組織図の線の通りに物事が動かないことは、BtoB営業を数年もやっていれば誰もが経験してきたことかもしれません。キーパーソンは、名刺の肩書きだけではなく、人と人の関係性の中にいるのです。結局のところ、顧客企業を攻略するとは、誰が本当のキーパーソンで、誰と誰がつながっていて、どこから攻めるかのパワーバランスを見抜くことです。
この「人物と関係性の構造」を1枚の図にして、チームで共有・更新できるようにするのが、Mazrica Targetの新機能「パワーチャート」です。
本記事では、パワーチャートが企業攻略のやり方をどう変えるのかを紹介します。
この記事の内容
パワーチャートとは

パワーチャートは、顧客企業における組織構造・人物・関係性を、営業チームが可視化・共有するための機能です。
組織構造の可視化
部署・人物・関連会社をチャート上に配置し、顧客企業の全体像を整理。
人物への意味づけ
人物に役割(意思決定者・影響者・担当者など)や、自社との関係性(好意的・ニュートラル・敵対的など)を整理。
関係性の可視化
人物同士に関連線を引き、社内のつながりや力関係を整理。

従来、CRMに蓄積される情報は「人物ごとの点」でした。名刺情報・過去のやり取り・メモ。これらの点が組織の中でどう位置づけられ、どうつながっているかは、担当者の頭の中にしかない。パワーチャートは、こうした点としての情報を、構造として可視化するための機能です。
なぜ、組織と人の構造を理解することが大切なのか
顧客企業の中では、立場の異なる方々がそれぞれの視点から意思決定に関わり、互いに影響し合っています。誰が何を重視し、誰が誰と影響し合っているのか──この役割と関係性の構造が営業担当者に見えていれば、どの方にどう働きかけ、どの方の声を借りて別の方に伝えるかを、丁寧に組み立てることができます。
意思決定は、情報を渡せば動くものではありません。人が人に働きかけ、納得が社内で伝わっていく中で、ようやく前に進みます。営業担当者の仕事の本質は、その働きかけの道筋をお客さまと共に描いていくことにあります。
パワーチャートは、この役割と関係性を営業チームが一枚の図として扱えるようにする機能です。お客さまの組織を深く理解することは、一人ひとりの立場に誠実に向き合うための準備そのものです。

パワーチャートが活きる3つの場面
場面1:商談準備
初回の商談に臨む前に「誰がどう関わる可能性があるか」を整理しておくことが、準備の質を大きく左右します。
パワーチャートでは、Mazrica TargetのAI組織図から関係しそうな部署・人物を取り込み、CRMに登録済みのコンタクト情報(名刺情報)とあわせて配置できます。現時点でわかっている役割や関係性を仮置きすることで、商談の場で何を確かめるべきか、どなたの視点を丁寧に伺うべきかが事前に整理できます。
準備の段階では、仮説を持って商談に入ることで、お客さまの話をより深く聞けるようになることが重要です。

場面2:商談中〜商談後の情報更新
商談を重ねる中で、お客さまの組織についての理解は少しずつ深まっていきます。「この方は技術判断の面において、社内で信頼されている」「この部署の方とこの部署の方は、過去に一緒にプロジェクトを進められた関係がある」「こちらの方は、現場改善の推進役として期待されている」──こうした気づきを、役割や関係性の更新としてパワーチャート上に反映していけます。
更新は営業担当者一人のものではなく、チーム全体で同じ画面を見ながら議論できる状態になります。マネージャーとの案件レビューも、後任への引き継ぎも、個人の記憶に依存せず、お客さまの組織への理解をチームで育てていく形に変わっていきます。

場面3:受注後の継続的な顧客理解
お客さまとの関係は、契約の締結で終わるものではありません。むしろ、そこから始まる長いパートナーシップの起点です。
導入後、お客さまの組織内では人事異動があり、新しいメンバーが加わり、関係部署が変化していきます。こうした変化を継続的にパワーチャートに反映していくことで、アップセル・クロスセル提案、カスタマーサクセス活動、担当者の引き継ぎといった受注後のさまざまな場面で、積み重ねてきた顧客理解が活きてきます。
特にエンタープライズ領域のように、複数部門にまたがって長期的な関係を築いていく場合、お客さまの組織を深く理解できているかどうかは、提供できる価値の質に直結します。個人の記憶に依存せず、チームとして顧客理解を蓄積できる仕組みは、長く信頼されるパートナーになるための基盤になります。

パワーチャートでの役割・関係性・関連の考え方
パワーチャートでは、人物に対して「役割」「関係性」を設定でき、人物同士には「関連」を引くことができます。それぞれ営業フレームワークでよく語られる概念と対応しており、3つの軸で組織を立体的に捉えるための仕組みです。
- 役割(その方が意思決定プロセスで担うポジション)
意思決定者:稟議や最終承認に責任を持つ方。経営層や部門長など
準意思決定者:意思決定メンバーの一員として関わる方
影響者:直接の決裁権は持たないものの、意思決定者の判断に大きな影響を与える方。技術的な専門家や、組織内で信頼されている立場の方など
担当者:窓口として継続的にコミュニケーションを取る方

- 関係性(自社とその方との間にある温度感)
強い拡散者:提案に前向きに関心を寄せ、社内でも拡散してくださっている状態
好意的:提案に前向きに関心を寄せていただいている状態
ニュートラル:まだ情報が十分に届いておらず、判断を保留されている状態
敵対的:懸念や反対意見をお持ちの状態

- 関連(顧客企業内の人物同士のつながり)
パワーチャート上では、顧客企業内の人物と人物を矢印で結び、社内の関係性を表現できます。「前職同期」「同じプロジェクトを一緒に推進」「元上司と元部下」など、自由に記述でき、誰の声が誰に届くかを営業チームで把握するための手がかりになります。

Mazrica Targetでは、役割・関係性の選択肢や、関連の色・矢印の向きを現場で使いやすい形にカスタマイズできます。
▼ 役割・関係性をカスタム

▼ 選択肢を追加・編集

▼ 関係性・関連の色や矢印の方向をカスタム

ここで大切なのは、これらの役割や関係性は、お客さまを評価するラベルではないということです。
たとえば「敵対的」とラベルがついている方は、敵ではありません。過去の経験や組織への責任感から、慎重な姿勢を取られている方です。その背景には必ず理由があり、その理由に誠実に向き合うことができれば、懸念を解消するための情報提供や対話の機会を、丁寧に設計できます。
Mazrica Sales / Salesforce との連携について
Mazrica SalesやSalesforceを普段からお使いのお客さまにとって、パワーチャートは日々蓄積しているコンタクト情報を、組織理解の文脈で活用する場になります。両ツールに登録されているコンタクトをパワーチャート上に配置することで、個々の人物が組織の中でどう位置づけられているかを一目で把握できます。
※ Salesforceについては、パワーチャートのメイン機能はすでにご利用いただけますが、Salesforce上の人物情報とのコンタクト紐付けは今後対応予定です。
2026年5月末までに予定しているアップデート
パワーチャートは継続的に機能拡張を進めています。5月末までには以下の機能を予定しています。
人物・組織へのコメント機能:各人物や組織に対して、営業メモや会話履歴などの補足情報を残せるようにします
案件情報の表示:Mazrica Salesのコンタクトと紐づけることで、人物ごとに関連する案件数や受注金額をチャート上で確認できるようにします
Mazrica Salesとの双方向更新:パワーチャート上の人物情報とMazrica Salesのコンタクト情報を相互に更新できる仕組みを整えます。どちらが正なのかがわからなくなることのないよう、迷わないフローを設計しています。
最後に
パワーチャートは、顧客企業の組織・人物・関係性を、チームで共有できる1枚の地図にする機能です。
営業の仕事は、お客さまの意思決定を支援することです。そのためには、お客さまの組織を深く理解し、一人ひとりの立場に誠実に向き合う必要があります。パワーチャートは、その理解をチーム全体で育てていくための仕組みとして、これからも改善を続けていきます。
現在追いかけている案件で、まずは1社、パワーチャートに置いてみるところから始めてみてください。お客さまの組織が、少し違った角度で見えてくるはずです。
Mazrica Targetとは
Mazrica Target(マツリカ ターゲット)は、2025年11月1日に提供を開始した営業特化型AI企業データベースです。約560万社の企業データ、Web上の公開情報、SFA/CRMに蓄積された営業データを統合し、「今、話すべき人」に「今、話すべきこと」を届けるための判断をAIが支援します。
【主な機能】
- 顧客選定:企業データベースとSFA/CRMの情報をもとに、優先的にアプローチすべきターゲット企業をAIが提示
- 事前調査:顧客企業のニュース・IR・財務データ・組織情報などをAIが収集・要約し、商談準備を効率化
- 提案作成:個社の事業戦略と自社商品の情報を掛け合わせ、ターゲット企業に最適化された提案ストーリーやスライドをAIが生成
今回リリースしたパワーチャートは、この中でも特に「事前調査」と「商談中〜受注後の顧客理解の深化」を支える機能として位置づけられます。AI組織図で自動生成された情報を起点に、営業チームが手を動かしながら顧客企業の組織・人物・関係性への理解を育てていくための場です。



















